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【  2010年02月  】 

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第一章

籠の鳥ーJAILBIRD-

2010.02.23 (Tue)

 亜美は、目を覚ました。少し、汗の匂いのする、何日も取り替えられていないシーツ。ふかふかの枕。何年も前に買った、紺と青のベッドカバー。うすい染みのついた白い木のベッド。部屋は、年代物だが、それなりに値の張った家具で、きちんと埋められている。大きめのブラウンの書斎机、お揃いのガラス窓のついたこげ茶色の本棚、同じく茶色の、大ぶりの木製のライトスタンド。窓からは、隣の柿の木がよく見える。ここ15年間、繰り...全文を読む

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第二章

籠の鳥ーJAILBIRD-

2010.02.23 (Tue)

 診察室で、毎度お馴染みの、あまりぱっとしない禅問答を院長とした後、亜美と父親は薬局に向かった。ここの薬剤師のおじさんが、亜美は、珍しい事に気に行っていた。「亜美さん、調子はどうですか。今度の眠剤は、少しふらつくことがあるかも知れませんよ」この、穏やかな中年の薬剤師がいなかったら、とっくにこのクリニックは、いつものように父親にわがままを言って替えていただろうと、いつも亜美は思う。それにしても、この薬...全文を読む

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第三章

籠の鳥ーJAILBIRD-

2010.02.23 (Tue)

 その夜、亜美は眠剤以外に、白い錠剤がひとつ増えている事を発見した。「これ、何だったかしら?」「先生が、説明していただろう。お前、聞いていなかったのか。新しい、アメリカから来た抗鬱剤だよ」それ以上、追求せず、亜美は夕食後の薬を飲んだ。・・・常に、どくとるマンボウの手によって、微調整される薬。十数種類以上ある、抗不安薬、抗鬱剤・・・いちいち、全部をインターネットで調べても、何がどこにどう効いているのか...全文を読む

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第四章

籠の鳥ーJAILBIRD-

2010.02.24 (Wed)

 次の朝、亜美はめずらしく早く目を覚ました。頭が妙にすっきりして、気分が軽い。・・・何でも、出来そうな気分だ。いつものように、ピンクのフリースを頭からかぶり、階下へ向かったが、例によって朝食は出来ていなかった。仕方なく、冷蔵庫からヨーグルトを出して、ブルーベリーのジャムをスプーンででたらめにぶち込むと、それを持って亜美は自室に戻り、PCを開いた。「おはよう、皆さん、新緑が奇麗ね。・・・お仕事のお時間...全文を読む

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第五章

籠の鳥ーJAILBIRD-

2010.02.24 (Wed)

 亜美は、その後、ぬるい風呂に入った後、サイトウさんが滅多に取り替えないシーツと羽根布団カバーでうつらうつらしていた。・・・亜美は、風呂の沸かし方を知らない。シーツの取り換え方も知らない。・・・ただ、そこにあるもので寝て、そこにある風呂に入るだけだ。夜、亜美はまたひろきさんと堪らずに交信していた。「ねぇ、TAXYの道順を覚えるのって、大変じゃない?」「それほどでもないさ。普段、道を走りまわっていれば...全文を読む

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第六章

籠の鳥ーJAILBIRD-

2010.02.24 (Wed)

 それからどうやって、部屋に戻ったのか、覚えていない。亜美は、暗いデスクの上で、いつものように同じページを開いた。HELP ME.HELP ME.亜美は、おそるおそる、しかし大胆に書き込みをした。頭は、星一つない空のように澄み切っていた。「皆さん。私、父にナイフを振りかざしました。助けてください」皆、これには驚いたのか、流石に沈黙が続いている。荒らしさえも、来ようとしない。暫くして、返信がひとつだけ...全文を読む

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第七章

籠の鳥ーJAILBIRD-

2010.02.24 (Wed)

 3日後、亜美はサイトウさんと、クリニックに向かっていた。「先生が、よくものの分かった方で本当によかった事。でも、私とクリニックに行って、どうなさるおつもり、亜美さん?」「少し黙ってて。考えを整理したいの」あの、暗い部屋での3日間が、嘘のように空は晴れ渡っていた。診察室で、ドクターは聞いた。「お父さんに、ナイフを振り回したって、その程度?」「(その程度?その程度って、どういう意味だろう。)はい」「亜...全文を読む

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第八章

籠の鳥ーJAILBIRD-

2010.02.24 (Wed)

 その1ヶ月後、亜美は、郊外のファミレスでひろきさんと会っていた。ひろきさんは、痩せ形でよく笑う人だった。しかし、とんでもないぼろ車でやって来た。「ごめんね、これ代車なんだ。事故っちゃって、ちょっと」ひろきさんは、すまなそうに言い訳した。嘘かな、とちらっと亜美は思ったが、そんな事はどうでもよかった。それより、車の中のきちんと整頓された様子や、ひろきさんの陽に褪せたTシャツが、亜美は気に入った。ただ一...全文を読む

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第九章

籠の鳥ーJAILBIRD-

2010.02.24 (Wed)

 その夜、ひろきさんからメールが来た。「亜美ちゃん、元気ですか。俺はちょっと、親父の手伝いで明日は忙しいんだよ。じゃね。」メールには、ひろきさんが下宿で飼っているという、熱帯魚の写真が添付してあった。亜美は、ベッドにうつ伏して、ひろきさんの焼けた肌を思い出した。それからおもむろに、自分の体の中心部に手を触れた。何度も、体を折り曲げた後、亜美はベッドの中で泣いた。サイテイだ。サイテイだ。私は、あのヤク...全文を読む

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第十章

籠の鳥ーJAILBIRD-

2010.02.24 (Wed)

 亜美が、木崎のいるデイケアを訪れたのは、その3日後の事だった。デイケアは、クリニックの3Fにあった。「お入り、嵯峨さん」木崎は、妙に無表情な笑顔で、亜美を出迎えた。亜美は、きょろきょろと、デイケアの一室を見回した。清潔に磨かれた椅子とテーブル。コーヒーメーカーの匂い。大きなTV。数人の、疲れた感じの中年の人が、静かに会話しながらウノをしている。・・・なんとなく、場違いだ、自分は、と亜美は思った。唯...全文を読む

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第十一章

籠の鳥ーJAILBIRD-

2010.02.24 (Wed)

 「それで?」その夜、亜美の父親は新聞から、始めて目を上げて尋ねた。「その、デイケアとやらに行く決心をしたのか」「ええ」「全く・・・。お前の気まぐれには、困ったものだ。お母さんが、お前の無理に薦めたカウンセリングで、とても不愉快な思いをさせられた事を、忘れたとは言わさんぞ」「・・・・・・1日、580円かかるの。いいですか?」「そんなはした金は、どうでもいい。しかし、危ないからTAXYで行きなさい」「...全文を読む

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第十二章

籠の鳥ーJAILBIRD-

2010.02.24 (Wed)

 次の朝、亜美は洗面所で、イプサの石鹸で丁寧に顔を洗った。それから、TSUBAKIのシャンプーで髪を洗うとドライヤーで乾かした。デイケアの扉を開けると、相変わらず、無表情な中年の人達4人が、退屈そうにトランプをしていた。「嵯峨と申します。おはようございます」挨拶は、軽く無視された。ただ、亜美が気になっていた、初老の看護師がこちらをむいてにこっと笑ってくれた。「嵯峨さん、おはよう。・・・私、深津と言い...全文を読む

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第十三章

籠の鳥ーJAILBIRD-

2010.02.24 (Wed)

 亜美は、木崎と深津サンと、4人の中年の人と、揚げ物がやたらと油っぽく感じられる仕出し弁当を食べた。「いただきます」木崎は、箸を揃えて、はっきりした発音で言った。「いただきます」「いただきます」「いただきます、今日はメンチカツなのね、美味しそう」「いただきます・・・」亜美も、小さな声で復唱した。・・・こんな、大勢で、食事を一緒にとるのは久しぶりだ。皆、美味しそうにぎらぎらしたメンチカツを食べている。...全文を読む

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第十四章

籠の鳥ーJAILBIRD-

2010.02.24 (Wed)

 木崎は、廊下の椅子の上に資料をどさっと広げた。亜美は、ちんぷんかんぷんのまま、1枚1枚目を通して行った。「あなたの中に、このような問題はありませんか・・・?」木崎は、ひとり言のように言った。「そう、問題」亜美は言った。「この、会場問い合わせと言うのは・・・?」「マップがあるでしょう」亜美は、すばやく目を通した。「A教会、K教会、B公民館・・・。教会・・・?あれは、お祈りなのですか?」木崎は、眼鏡を...全文を読む

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第十五章

籠の鳥ーJAILBIRD-

2010.02.24 (Wed)

 亜美は、その土曜日、久しぶりに駅の改札に立っていた。一人で、電車に乗るのは何年ぶりだろう。亜美は、忙しく不安げに駅の路線図を見上げた。R駅・・・R駅・・・どうやら、JRを1回乗り換え、それから地下鉄に乗ればいいらしい・・・切符を買うと、亜美は改札をくぐった。沢山の人が、目的地はばらばらに歩いている。亜美は一瞬、気分が悪くなった。しかし、なんとしてもプラットフォームに辿り着かなければ。階段を、やっと...全文を読む

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第十六章

籠の鳥ーJAILBIRD-

2010.02.24 (Wed)

 「家庭機能研究所」亜美は、ためらわずにその自動ドアをくぐった。この3Fが、今日の目的地なのだ・・・ 意外と狭いエレベーターを降りると、白い扉の前で、冴えない感じの初老の男女が、受付をしていた。 「あのう。”あなたの家庭はどこかへん?”の会場は、ここですか」 二人は、訝しげに亜美のいでたちを覗き込んだ。 「そうですよ。・・・受講料、3000円」亜美は、あっさりと財布を開くと、千円札3枚を、小さな箱に落とし...全文を読む

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第十七章

籠の鳥ーJAILBIRD-

2010.02.28 (Sun)

 「あるところに、ある少女がいました。・・・その子の両親は、ある日外出する時、その子に言いました」「地下室の扉を、開けてはいけないよ」「さて・・・彼女には、きょうだいは居たと思いますか」亜美は、手を小さく挙げて、つぶやくように言った。「・・・盲目の、妹がいた」先生は、言った。「なかなか面白い答えです。さて、他の質問はありませんか」他の人が、手を挙げて言った。「何故、地下室のドアを開けてはいけないと?...全文を読む

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