にがくてあまい午後

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【  2012年10月  】 更新履歴 

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  10.01.  【 にがくてあまい午後 】  理想   さわりを読む▼
  10.01.  【 水面の鳥ーBLUEBIRD- 】  第34章   さわりを読む▼
  10.02.  【 水面の鳥ーBLUEBIRD- 】  第35章   さわりを読む▼
  10.03.  【 にがくてあまい午後 】  過去   さわりを読む▼
  10.03.  【 水面の鳥ーBLUEBIRD- 】  第36章   さわりを読む▼
  10.04.  【 水面の鳥ーBLUEBIRD- 】  最終章   さわりを読む▼
  10.04.  【 にがくてあまい午後 】  不愉快   さわりを読む▼
  10.06.  【 にがくてあまい午後 】  答え   さわりを読む▼
  10.08.  【 にがくてあまい午後 】  本音   さわりを読む▼
  10.10.  【 にがくてあまい午後 】  建前   さわりを読む▼
  10.12.  【 にがくてあまい午後 】  休み   さわりを読む▼
  10.14.  【 にがくてあまい午後 】  偶然   さわりを読む▼
  10.14.  【 DOWN BEAT 】  1 邂逅   さわりを読む▼
  10.15.  【 DOWN BEAT 】  2 奴隷   さわりを読む▼
  10.16.  【 にがくてあまい午後 】  疲れ   さわりを読む▼
  10.16.  【 DOWN BEAT 】  3 愛玩   さわりを読む▼
  10.17.  【 DOWN BEAT 】  4 頂点   さわりを読む▼
  10.18.  【 にがくてあまい午後 】     さわりを読む▼
  10.18.  【 DOWN BEAT 】  5 被虐   さわりを読む▼
  10.20.  【 にがくてあまい午後 】  一日   さわりを読む▼
  10.22.  【 にがくてあまい午後 】  秋の風   さわりを読む▼
  10.22.  【 刻印-sin- 】  第1章   さわりを読む▼
  10.23.  【 刻印-sin- 】  第2章   さわりを読む▼
  10.24.  【 にがくてあまい午後 】  日曜日   さわりを読む▼
  10.24.  【 刻印-sin- 】  第3章   さわりを読む▼
  10.25.  【 刻印-sin- 】  第4章   さわりを読む▼
  10.26.  【 にがくてあまい午後 】  前日   さわりを読む▼
  10.26.  【 刻印-sin- 】  第5章   さわりを読む▼
  10.27.  【 刻印-sin- 】  第6章   さわりを読む▼
  10.28.  【 刻印-sin- 】  第7章   さわりを読む▼
  10.28.  【 にがくてあまい午後 】  誕生日   さわりを読む▼
  10.29.  【 刻印-sin- 】  第8章   さわりを読む▼
  10.30.  【 にがくてあまい午後 】  決意   さわりを読む▼
  10.30.  【 刻印-sin- 】  第9章   さわりを読む▼
  10.31.  【 刻印-sin- 】  第10章   さわりを読む▼


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理想

にがくてあまい午後

 月曜日。あたしは、宛名書きした献本の入った厚ぼったい封筒を十冊、自転車の荷台に積んで、勢いよく郵便局へ発進した。汗ですっぴんにつけた海用の日焼け止めが、流れ落ちそうだった。郵便局は涼しかった。けど、係員の人はどさっと積んだ封筒の山を、確認して言った。「二千円です」あたしはその場にぶっ倒れそうになった。じゃがりこ二十個分だ。・・・ううん。しかも、この四倍まだ献本は残ってる。合計金額はざっと考えて、お...全文を読む


第34章

水面の鳥ーBLUEBIRD-

 元旦の夕方、澪は父親とおせちを食べていた。「それで、卓也くんは被爆している模様なのかい?」「ええ、まあ・・・」澪は曖昧に答えながら、栗きんとんをつまんだ。「ふうむ」父親は呻った。「なあに?」「いやその・・・。同じ、男としてどうも納得がいかん」「いやね」澪は顔をあからめた。「途中で帰ったこと?」「ううむ・・・それだよ。卓也くんは、他に好きな女性がいるのじゃないのかね?」澪は、栗きんとんを落っことしそ...全文を読む


第35章

水面の鳥ーBLUEBIRD-

 「それでさ」泣き腫らした目の澪の前で、ハンバーグを食べながら蓉子は言った。「私に、何を言って欲しいの?」「え・・・」「人生ってね」蓉子はきっぱり言った。「人に出してもらう答えって、ないんだよ。自分で、自分のしたいことに向かって突き進んで、その結果の自分をよしとして、また進んでいくしかないんだよ」「・・・」「澪ちゃんはさ」蓉子は言った。「何をしたいの?結婚?」「結婚は・・・」澪は言い淀んだ。「私は、...全文を読む


過去

にがくてあまい午後

 だけど。あたしはその夜、寝返りしながらぼんやりしてた。いやなことを思い出したからだ。小学六年生の時、あたしはお兄ちゃんに無理やりやられた。・・・あたしはもう生理が始まってたけど、妊娠はしなかった。だけど、お兄ちゃんがぎゅうぎゅう痛いところへ無理やり突っ込んできたことははっきり覚えてる。あたしが、下着を真っ赤にして泣いてるのがみつかって、お兄ちゃんは遠くの親戚の家にやられた。中学に入って、あたしは野...全文を読む


第36章

水面の鳥ーBLUEBIRD-

 「けどさ」聡子はタリーズのアフォガートを頬張りながら言った。「そいつ、要するに逆玉狙いでしょ?」「そうね」澪は、チキンサンドイッチを片づけながら言った。「うーん」聡子は言った。「あたしの友だちで、ほんとに金持ち狙ってる子って凄いわよ。とてもじゃないけど真似できないわ。・・・あたしは、そこそこに愛も欲しかったから、マンション暮らしで我慢してるけど。あんたみたいな世間知らずに、渡り合える相手と思えない...全文を読む


最終章

水面の鳥ーBLUEBIRD-

 「澪ちゃんさぁ」奈央子は、午後の誰もいない支援所で紅茶を啜りながら言った。「いじめられてるよ」「え・・・?」「気がつかなかったの?」澪は、絶句した。「澪ちゃんの持ってきたもの、みんな捨ててるよ」「・・・」「金持ちをひけらかしたら、駄目だよ」「私は・・・そんなつもりは・・・」「ないと思った」奈央子はため息をついた。「小さい頃から周囲に虐められてると、感覚が鈍って来るんだよ。私もそうだから」「・・・」...全文を読む


不愉快

にがくてあまい午後

 ・・・あたしは、いつものように自助グループに戻ってた。その日、しばらくご無沙汰してた神木さんと、ぶりっこの友実がいた。あたしは気分わるくなって、逃げ出そうとしたけど遅かった。「木村さん、可愛い帽子ね」・・・甘ったるい調子で友実が言った。よりによって、去年セールで買った五百円の帽子のことを言ってるのだ。少し、くたびれた緑のそのキャスケット帽を、神木さんがちらっと見た。(これだから友実は)神木さんとあ...全文を読む


答え

にがくてあまい午後

 第二火曜日が、来た。待ちに待った、小説サークルの例会だ。・・・あたしは短編を、昨夜のうちにいくつかブラッシュアップしてあった。朝、洗濯物が少し重たくって、自分が疲れてるのが分かったけれども、我慢してガーリックトーストとベーコンとトマトをお腹に詰め込んで、電車に乗った。目的駅につくと、後ろから背を叩く人がいた。「田万川さん」「木村さん、ずいぶん早いじゃないの」「えへへ、田万川さんこそ」「ちょうどよか...全文を読む


本音

にがくてあまい午後

 その晩、あたしは牛肉のこま切れとレタスと卵を炒めて、ビーフペッパーライスを作った。冷凍の王将の餃子も焼いた。パパはいつも通り五時に来た。「油っぽいけど、おいしそうだな」パパはよくしゃべった。・・・だけどあたしは、正直頭が痛くて、何演説してるんだかほとんど聞き取れないほどだった。「敦美」「はい?」「あずきアイス」「・・・」あたしは冷蔵庫からパパの好物を出した。頭は割れそうだった。「あたしちょっと、気...全文を読む


建前

にがくてあまい午後

 しかし、次の日はクリニックだった。あたしはいつものように、小綺麗な待合室のドアを開けた。・・・壁にはいっぱい色んな自助グループのパンフレットがつるしてある。それから、目立たないところにDVホットラインの番号の書いたポスターも貼ってあった。あたしはちょっとぞっとして考えた。(けいちゃん、酔っ払って暴れたから収容されたのかな)そうに、違いない。あたしは、どこまでもやさしいけいちゃんしか知らないけど。そ...全文を読む


休み

にがくてあまい午後

 次の日。あたしは、早起きしてダウニーで洗濯したけど、ものすごく頭が痛かった。・・・それでも、我慢してハムエッグとハッシュドポテトを焼いて、にんじんとレタスのサラダを作って、イングリッシュマフィンと食べた。そのうち、あたしはけだるくなって眠り込んでしまった。気がつくともう十一時だった。(いっけない)あたしは、初めて自分から支援所に電話した。「やあ」「風間さん」「どうしたの?」「今日、出るつもりだった...全文を読む


偶然

にがくてあまい午後

 「あの・・・」「あ、木村敦美さん」新城さんは何の気なし、という感じで頭を下げた。「こんにちわ」(気持ち悪いなぁ)(これ、ストーカーかなぁ・・・)それでもあたしも一応頭を下げた。「こんにちわ」「僕の本、届きました?」「ええ」「あなたの本も、届きましたよ」(そりゃ、そうよ。五十冊献本分来ちゃったから、講座の人には全部配ったんだもん)あたしはちょっといらっとしながら答えた。「それで?」「私、今日からここ...全文を読む


1 邂逅

DOWN BEAT

 私と雅人は、チャットルームで知り合った。 当時、私は2LDKのマンションで、折り合いの悪い父の介護をしながら、嫁き遅れかかっていた。だから、設定は「24歳上の夫を持つ人妻」とした。 37になって「独身」と言うと、男は警戒する。…それに、男は「人妻」が大好きだ。人のものを、横取りしたがるのが男だから。 雅人の、チャットルームの待機メッセージは、こうだった。「女に生まれてきたことを、後悔するような羞恥...全文を読む


2 奴隷

DOWN BEAT

 ある夜、輪ゴムで縛った乳首に、丹念に歯磨き粉を擦り込み、歯ブラシで何度も何度も刺激して、頂点に達したいやらしい声を10回程聞かせた後、私は言った。「あのね」「はい?」「私は…父に可愛がられたいと思っていたの」「知っているよ」「でも…本当に、私を虐めていたのは、父でなく母なんです」「?」「母は、いつも言っていました。雅人さんと同じことを」「『女に生まれた事を後悔しろ』と?」「はい」 それは本当の事だっ...全文を読む


疲れ

にがくてあまい午後

 三連休が来た。だけどあたしは、何にも予定は入ってなかった。朝起きて、何だか疲れがたまっているのに気付いて、洗濯した後、南高梅のおにぎりを簡単に握って、シャビイと食べた。それから、サークルのお題「エピグラフ」をやるために、大好きな室生犀星とヴェルレーヌの文庫本を、本屋で買ってこようと思ったけど、もう元気が続かなかった。郵便受けを見たけど、広告以外何にも入っていなかった。あたしは冷房をかけてごろっとし...全文を読む


3 愛玩

DOWN BEAT

 翌朝。 私は、乳首がはしたなく勃起して、ショーツがぐしゃぐしゃに濡れた状態で目覚めた。まだ、雅人に命令されてした愛撫の感触がはっきりと残っているのだ。 指で、クリトリスを堪らずに擦ると、私はすぐに逝ってしまった。何度も、何度も、「雅人様…」と呟きながら、犬のように四つん這いになって、指を淹れてGスポットをかき混ぜた。自分の心も体も、雅人に調教されつつあるのを、厭という程感じた。 私は、貴方の、淫乱...全文を読む


4 頂点

DOWN BEAT

 私は、次の日、特に雅人に言われもしないのに、自分の恥ずかしい写メを自らパシャパシャと撮っていた。 青緑の孔雀色のブラジャーから、乳房がはみ出した写真。同じパンティを、わざとずりさげて陰毛と恥部をあらわにした写真。…それから、大股を広げて、パンティを両手で引きあげてクリトリスの形をくっきり見せた写真。 自分撮りをしている内に、私のおまんこはじっとりと濡れて、お口がぱっくり開いて来た。…パンティを全部脱...全文を読む


にがくてあまい午後

 雨が、来た。夏中降ってなかった雨が、一度に来て関東はずぶ濡れだった。あたしは、いつものようにお弁当箱にご飯とハンバーグと冷凍のポテトサラダとかぼちゃと枝豆のサラダを詰めた。傘をもって、ドアの外に出るとびくっとするほど大きな声であいさつされた。「おはようございます」「新城さん」「私、本日は掃除機をかけております」(見りゃわかるよ)「ご苦労様です」「では」廊下をがーがーやっている新城さんを取り残して、...全文を読む


5 被虐

DOWN BEAT

 もう、昼は私の世界の一部ではなかった。慌ただしく食事を済ませ、洗濯を済ませ、厭で仕方がない父の世話をして、ひたすら夜を待った。…私は雅人の容赦ない攻めに溺れた。 なのに。 ある日、雅人はぽつんと言った。「もう、帰りなさい」「え…?」「ここに、来ては、いけない」「どうして…?」私は声を荒げた。「由希には優しい亭主がいる」雅人には、他に女が、いや奴隷が出来たのだろうか。「あんな退屈な人…私は、雅人様を愛し...全文を読む


一日

にがくてあまい午後

 次の日は穏やかな日だった。雨はかすかに降り続けてたけど、あたしは健康診査へ行った。内科は静かで空いていた。検尿をして、身長と体重を測っておへその周りを測った。「80cmです」う。これは完全にメタボ予備軍だ。去年の末、芹田と別れてから半年くらいあたしはずーっと落ち込んでた。毎日毎日、ただご飯を作って洗濯して掃除して泣いてた。・・・風の具合や、雨の音が気になってきたのが六月ごろだったっけ。その間運動し...全文を読む


秋の風

にがくてあまい午後

 次の日、もうそんなに気の狂うような暑さは遠のいていた。あたしは、冷房を消すと顔を洗って生協の化粧水と乳液をつけた。少し空いた気分を見透かすように、郵便物がどさっとまとめて来た。(小説の会の軽井沢文学散歩のお知らせ)(友達の短編小説朗読の会)(エッセイ講座の先生の本の批評と、先生の本の贈呈)いろいろ見て、カレンダーにしるしをつけてるうちにあたしはうなった。(一番大事な、小説講座の益田先生がゲストに来...全文を読む


第1章

刻印-sin-

 「主税先生」葵の細く凛とした声が、カルチャーセンターの真っ白い廊下に響く。「わたしの、先日お渡しした原稿・・・」「あ、あれね」主税凱男はふっと笑った。「僕の、今度のTVドラマに使わせてもらったよ」「え・・・」「よく、書けていたからね」「お話が・・・よく飲み込めません」「だけどね、あれじゃプロの原稿としては無理なんだよ」凱男は背伸びをした。「だからね、僕がアレンジしたの」「それって・・・」「そう」凱...全文を読む


第2章

刻印-sin-

 その晩、葵は激しい自慰をした。・・・あまり濃くない陰毛の内側に、人指し指と中指を滑らせた。(せんせい)(主税せんせい)講座仲間の声が、耳にこだました。(あの先生、やっぱり物凄いSなんだって)(志摩子、主税先生に顔踏みつけられてそのまま、逝っちゃったんですって)(ふふ)(羨ましいな・・・あたしも)そう。わたしも。主税先生に、顔を踏まれたい。葵の指は、秘部を掻き分けるように一層激しく動いた。吐息が、漏...全文を読む


日曜日

にがくてあまい午後

 その土曜日のトークショウは楽しかった。あたしは久しぶりに、電車に揺られて銀座へ出た。・・・三越の8Fが会場だった。先生のトーク自体は結構退屈だったけど、終わった後例のようにお茶会があった。「先生」あたしはめずらしく積極的に声をかけた。「どうしたの」「・・・正直、カルチャーの講座って退屈じゃないですか」「うん」先生はあっさり言った。「皆、素人だからね。『何書いたらいいんですか』って逆に聞いてくる人も...全文を読む


第3章

刻印-sin-

 次の土曜日、講義が終わった後、エレベーターの外に出た葵は途方に暮れた。(雨だ・・・)「送って行こうか」「え?」振り向くと、そこには黒い傘を持った主税凱男がいた。「わた・・・し」「怖がらなくっていいよ、そんなに」「はい」「素直だね・・・いや、従順と言うべきか。こないだは、ひとりで随分しちゃったでしょう」「帰ります」「ずぶ濡れに、なっちゃうよ」凱男はそういうと傘を広げた。「入っていらっしゃい」「・・・...全文を読む


第4章

刻印-sin-

 雨は再び雪に変わりつつあった。葵は、やっとの思いで部屋に帰りつくと、暖房のスイッチを強にした。コートを脱ぎ、ひざ丈のスカートの上に着たシフォンのブラウスのボウタイをほどくと、頭を抱えた。(このままじゃ)(このままじゃ)(・・・いいように流されてゆく)意を決した葵は、スマートフォンを取り出すと、よく知っているメルアドを震える手で押した。「こんばんは。寒いですが大丈夫でいらっしゃいますか。先ほどはあり...全文を読む


前日

にがくてあまい午後

 月曜日は涼しかった。寒いくらいだった。あたしは、いつものように朝食を食べた後、外に出て自転車を無理して出そうとしていると例の新城さんが、制服を着たまま会釈した。「おはようございます」「おはようございます」「木村さん」新城さんは言った。「ちょっとお時間頂けますか」「?」「私、新しい短編の筋書き考えました」「はぁ」「三十の女性と四十五の男性が誕生日に一夜の恋に落ちます。・・・しかし、お互いに忘れられな...全文を読む


第5章

刻印-sin-

 日曜日。葵は、思い切って細い紐の黒のTバックを初めてこわごわとランジェリー・ショップで手にした。いつもの店員がこっそり耳打ちした。「お客様」「え」「ふふ・・・恋してらっしゃるの?」「あ・・・・」「いつも、大人しめのランジェリーばかりで、折角のスタイルがもったいないなと思っていましたのよ」「・・・」「こんなのは、どうでしょう」店員は、やはり細いリボンの紐だけで腰の横が結ばれている、黒いほとんど透けた...全文を読む


第6章

刻印-sin-

 (だめだ)(だめだ)(こんなんじゃ・・・だめだ)葵は泣きながら思った。(今日がバレンタインなのは分かってた・・・でも、勇気が出なくてとうとう先生に渡せなかった。ストロベリーシャンパントリュフ)(先生に抱かれることばかり、考えていた)(わがままだ)(わたし・・・先生の住所すら知らない。皆、知ってることなのに)葵は、必死に涙を拭くと、窓の外を見た。雪はしんしんと積もり始めていた。(さむい)(自分で・・...全文を読む


第7章

刻印-sin-

 土曜日。いつものように、主税凱男はカルチャーセンターの教壇に立っていた。「あの先生さぁ」「え?」「どSなんでしょう」新しい生徒の、由未が言った。「確かに・・・サディスティックよね、時々物言いが」「あら、でも主税先生優しいわよ」なにげなく、古参の紗希子が言った。「できない子にも、それなりに才能を引き出そうとしてる」「!」「どうしたの、葵」不思議そうに、唯一親しい加絵がつぶやいた。(先生・・・優しいん...全文を読む


誕生日

にがくてあまい午後

 誕生日が、来た。あたしは九時ごろ起きて、のろっと洗濯をした。外は雨降りそうだったから、部屋干しにした。・・・こうやって怠けるのも自分へのご褒美の日だ、って思いながら。それから、郵便箱をふとのぞくと、封筒に入ったサークルの宝珠さんの新しい小説があった。宝珠さんの小説は、フランス文学みたいでいつも彼女自身みたいにお洒落なのだ。夢中で読みふけってると十一時だった。(いっけない)あたしは、茄子の乱切りとピ...全文を読む


第8章

刻印-sin-

 日曜の午後、葵は歌舞伎町にほど近いマンションの一室の前で、足を止めた。「いらっしゃい」「主税先生」凱男は、少し酔った風な声音で言った。「とうとう、来ちゃったね」「・・・女性の心理を読むのが巧いです」「作家だからね。ま、入んなさい」部屋は、思ったより暖かく雑然と資料が散らばっていた。原稿の入ったアニエス・ベーの鞄を抱えたまま突っ立った葵に、凱男はリビングのソファに、腰を下ろすよう勧めた。・・・ソファ...全文を読む


決意

にがくてあまい午後

 次の日。あたしがぼけっと窓の外を見やると、新城さんが普通の服装で出勤するところだった。・・・今日はクリニックに行く日だ。外に出ると、かなり寒かった。秋と冬が一気に来た感じだ。「おはようございます」「おはようございます」新城さんは、ちょっと照れた感じであいさつした。「小説、進みましたか?」「いえ、なかなか。一度別れたものがよりを戻すのはむつかしい設定です」「そうですよね」あたしはつぶやいた。「どうか...全文を読む


第9章

刻印-sin-

 ぐったりと、ソファに横になった葵の横で、凱男は茶封筒から出した葵の原稿を、一心に読み耽った。「こいつは及第点だ」「ほんとですか?」躰を起こした葵は尋ねた。「ああ、よく出来ている」「・・・」葵は、嬉しさに有頂天になった。凱男は何気なく続けた。「ただし・・・」「ただし?」「気になることがある。他の子から聞いたんだけど、君、教会に通ってるんだって?」「はい」「なんで?」凱男は珍しく強い語調で言った。「母...全文を読む


第10章

刻印-sin-

 やがて、気絶している葵の横で、凱男は黙って冷たく絞ったタオルを、葵の額の上に乗せた。「先生」「すまなかった」凱男は今までにない震える調子で言った。「いいえ」「・・・つい、かっとなった。悪気はなかった。許して欲しい」「いいん・・・です」葵は少し咳込んだ。「これ」凱男は、手にしたブランデーグラスを葵に手渡した。「わたし・・・お酒は」「少しでいいから飲みなさい。躰が温まるよ」葵は、琥珀色の液体を少し舐め...全文を読む

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