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水面の鳥ーBLUEBIRD-

第5章

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白と黒でデザインされたマンションに、帰り着いた澪は、1錠減った白い錠剤を、懐かしく思いながら、洗面台で残りのデパスを飲んだ。・・・それから、歯を磨くと、アベンヌの石鹸で、軽い日焼け止めを落として、薬用の化粧水をぱしゃぱしゃとつけた。

澪は、化粧を滅多にしない。すぐ下目蓋に滲むマスカラも、ハンカチに染みの付くファンデーションもあまり好まない。・・・いつも、薄い櫻色の日焼け止めをつけて、唇にグロスを塗る以外は、ほとんど顔は飾らない。



3日後。

いつになく、思いがけず沈んだ気持ちを抱えた澪は、奨を呼び出していた。

「私ね・・・」

「え?」

「何だか、このままニンフォマニアになりたくないと、思う」

「らしくないねぇ」

「そう、思うけど・・・」澪は、気づかぬ内に泣いていた。「馬鹿だって思うでしょ?」

奨は、言った。

「『ショーシャンクの空に』って見た事あるか?」

「ないわ」

「見ろよ」

チャットは、切れた。澪は、言われた映画を検索した。・・・それは、あまり澪の好みではなかったが、あらすじを追う内に興味が出て来た。

次の日。

「美玖」

「見たわよ」澪は言った。『ショーシャンクの空に』

「俺は」奨は言った。「エド・ケンパーと酷似した家庭環境に育った」

「・・・」

「しかし」奨は続けた。「自分で色々勉強して、ああなりたくないと学んだんだ。・・・あんたには、昔の俺と同じ匂いがする」

「そう・・・」

「だから、惹かれた」

澪はいつしか、激しく泣いていた。水滴が、いくつもPCのキーボードに毀れた。

「わたし・・・」

「うん」

「色んな男性を、誘惑しては最後に、取り返しのつかない程傷つけてしまう。・・・まるで、相手のアキレス腱を切るように」

「うん」奨は言った。「そう、思ったよ」

「わたしね」

「うん?」

「あなたのような人を、待っていたのだと思う」

「それは、買い被りすぎだよ。俺は、あんたの言う通り、今でもここに居るような男だ」

「ごめんなさい」

「俺さ」

「え?」

「あんたに言われて、子どもと暮らしたいと思ったよ」

「子どもいるの?」澪は、思わずつぶやいた。

「照れるなぁ」奨は言った。「そんなに意外かな?・・・子供って、言っとくけど天使でもなんでもないぜ。憎たらしいんだ。きったないんだ。虐待に走る気持ちすら分かるよ。だけど、気がつくと自分の一部になってるんだ」

「そう」

「なってるんだよ。・・・」

澪には、奨もPCの向こうで、泣いているのが手に取るように、分かった。

「つらいわね」

「自分の事、心配しろよ」奨は、嗚咽を抑えているようだった。「今日は、おやすみ」

「おやすみなさい」

澪は、チャットをログアウトした。・・・PCを離れて、洗面台で、ぐしゃぐしゃに濡れた顔を洗って、鏡を見ると、少し輪郭が柔らかく老けた気がした。それは、今までにない新鮮な感覚だった。

(私でも、誰かの母親になれるのだろうか)

20才の頃から安定剤を飲み過ぎている澪には、子どもは持てない。奨の痛みは、本当には分からない。でも。

(祈ってみようか)

(祈ってみようか)

(あの、人のために)

(今だけは)

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