にがくてあまい午後

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水面の鳥ーBLUEBIRD-

第6章

次の日、折悪しく父が来た。

父は、挨拶と言うものをしない。・・・人に対する、気遣いと言うものをしない。

「このクッションは、少し紅過ぎて派手だな」

そう、文句を言いながら、父は澪の好きなソファにどっかりと座った。

ふん、大きなお世話。

「これが、今月の生活費だ。足りなければ、言うように」

ああ、そお。

「澪、この珈琲は苦すぎるし、私は、クリームが苦手なんだよ」

「・・・すぐ、そこの評判の店で買って来たのだけれど?」

父は、澪の言葉を無視して、クリームを汚く口につけながら、ア・ラ・シュークレームを頬張った。

「また、来月来る」

2度と、来ないで。いつも、生活費は振り込んでって、言ってるのに。



その夜、いつになくいらいらした澪は、奨にメールした。

「馬鹿。馬鹿。馬鹿」

「・・・どうしたんだ」

「父が、来たの」

「それと俺と、どういう関係がある」

「・・・ごめんなさい」

「あのなぁ」奨は、少し声を荒げた。「俺には子どもがいる。そういう不安定な感情は、危険なんだ」

「・・・引き取ったの?」

「そうだよ」

奥さんとは別れたの、と聞きかけて澪はやめた。

「俺、怒る時は怒るし」

「そうかなぁ」

「怒るよ。・・・お祈りしてれば、事が解決するって思ってる奴にはね」

「・・・」澪は、絶句した。

「別に」奨は続けた。「あんたが、何人男を引っかけようが、俺は気にしない。どんなに淫乱でも、俺には関係ない。ただ・・・」

「ただ?」

「あんたが嫌っている父親も、いずれ死ぬ。あんたが好いているヘルパーとやらも、いずれ死ぬ。その時、どうやって暮らして行くつもりだ?」

「それは・・・」

「選択するのは、あんた自身なんだよ、美玖」

チャットは、ログアウトされた。

(口説いてるの・・・?)

(いや、そんな人じゃない)

(隙さえあれば、私を取って喰らう男だ)

でも。

私は、愛し始めているに違いない。この、男を。


3日後。

クリニックで、例の若いドクターは言った。「感心しないね」

「え・・・?」

「アダルトチャットで、知り合ったと言ったね」

「そうですが」

「もう、その人との交際は止めなさい」

NO.NO.NO.

「はい」

澪は大人しく頷くと、診察室を出た。看護婦は、眼鏡の奥から、澪をちらっと見ると、請求書と処方箋を渡した。看護婦は、よく見るとグラマーな胸を、白衣に詰め込んでいた。

近くのスーパーで、黒いバレエシューズのイラストレーションのついた白い長袖のTシャツと、ハーゲンダッツのクリーンティーとラムレーズンとバニラの詰め合わせを買った後、ケンタッキーフライドチキンで、ツイスターセットを澪は軽い昼食にした。

その後、すぐ近くの白い薬局で澪は聞いた。「また、薬が減ったようですが」

「先生が、説明なさいませんでした?」

「されましたけど・・・」

「一日、6錠までなら飲んでも大丈夫です」

6錠。

その夜、澪は思い切って白い錠剤を溜めて、夜6錠を一気に飲んだ。

(眠りたい)

(眠りたい)

(もう、誰かを待って、緊張して生活するのに、疲れた)

急に、眠気が襲ってきた。澪は、深海に潜水するような心地よさを感じながら、ベッドに深く横たわって電話を取った。

「さよなら」

それは、どことも分からないDVホットラインの番号だった。

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