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水面の鳥ーBLUEBIRD-

第8章

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次の朝。


父親は、意外と早く起きていた。「澪、喫茶店にでも行くか」

澪は、ジーンズに黒いヒートテックに、グレイのモヘアのセーターを被って、青いフェイクのムートンを着た。父親は、らくだ色のダウンで、玄関で不器用に靴を履いた。

二人は、黙って一番近い、オープンカフェに向かった。

「私、ピザトーストセット」

「私は」父親は一拍置いて言った。「小さなコーヒーと、フォンダンショコラと言う奴を」

店員は言った。「エスプレッソですね、かしこまりました」

間もなく、食事が、運ばれてきた。・・・父親は、震えそうな手で、エスプレッソを少し飲んだ。澪は、ピザトーストにかぶりつきながら、思った。

(この人にも、老いと言う物がやって来ているのだ)

父親は、フォンダンショコラで、少し舌を火傷したようだった。「澪、ゆっくり食べた方がいいぞ」

(うるさい、なぁ)

二人は、それっきり黙って、コーヒーを飲み干した。「1050円です」・・・父親が、くたびれた茶色の財布から、1000円札を抜き出した。それから、澪に言った。「50円玉、ないか」

澪は黙って、50円玉を自分のコーチの財布から出した。

外は、寒かった。

「これから、どうする?」

「私は、クリニックと買い物に行くわ」

「一人で、大丈夫か」

(大人だってば)

「大丈夫です」澪は、もう歩きだしていた。父親は、取り残されたようにぽつんと、暫く耳を掻いていた。


クリニックに着くと、1時間ほど待たされた。澪は、「アエラ」に目を通した。・・・他には、女性週刊誌と、少年ジャンプしかなかった。

「先生・・・」

「困ったね」ドクターは、はっきり言った。「お父さんと、暫く暮らしなさい」

「でも」

「君は」ドクターは言った。「ODするほど、精神的に追いつめられている。・・・今は、肉親と一緒にいなさい」

はい。

澪は、外の冷たい空気を吸うと、薬局で、いよいよ減った薬を貰って外に出た。繁華街を、歩いていると何とはなしに涙が出てきた。

(私は、結局親から金をせびりとる乞食なんだろうか)

(奨に、会いたい)

奨に惹かれたのは、彼にも家庭の記憶がなかったからだったのだ。・・・エド・ケンパーの母親は、彼を地下室に閉じ込めたと聞いたことがある。

(私には、家庭と言うものの記憶がない)

澪は、いつしか激しく泣いていた。幾人かの通行人が、訝しげに振り向いた。


マンションにつくと、父親は暖房を強にして、ソファーでうつらうつらしていた。

「・・・夕食、何にする?」

「出前でも何でも、取りなさい」

澪は、釜飯の出前のダイヤルを勝手に回した。「ビビンバ釜飯、2つ」「あと40分、かかります」

父親は、耳が遠くなっているらしかった。「何を、頼んだ?」

「ビビンバ、好きだったでしょう」

「今は、高血圧で塩気の多いものは避けているんだよ」

「頼んじゃったもの」

「まぁ、いいだろう」そういうと、父親は再び眠り始めた。・・・澪は、寝室に戻るとPCを開いた。

奨。

奨。

「なんだ」返事は、あった。

「私、きのうデパスを飲んだわ」

「それで?」奨は冷静に答えた。「どのくらい?」「0.5mgを6錠」

「・・・そのくらいでは、死なないよ」

「心配はして、欲しいのよ」

「俺には、もう俺の生活があるんだ」奨は答えた。「誰も、いないのか?」

「・・・父親が、いるわ」

「良かったじゃないか」奨は言った。「仲良く、しなさい」


その夜、澪は寝つかれなかった。・・・気がつくと、父親もまたソファーで寝込んでいた。

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