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水面の鳥ーBLUEBIRD-

第9章

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二日目。

澪が、例によって昼近く起きると、もう父親はいなかった。・・・代わりに、短い書置きがあった。

「4時に、私のマンションで宅急便を受け取る。遅くなる」

ま、いっか。

澪は、冷凍してあったフランスパンをトーストしながら、レタスをちぎって、胡瓜を切り、プチトマトを添えた。ベーコンを炒めて、フライパンから取り出して、今度は卵をチーズとスクランブルし、コーヒーを淹れた。

トーストを齧り終わると、澪はいつものようにPCを開けた。ユーチューブを出鱈目に検索していると、ジェーン・フォンダの「黄昏」が見つかった。

音楽は、この上なくよかった。・・・しかし、ヘンリー・フォンダの偏屈な顔を見ていると、澪は憂鬱になった。気がつくと、澪はふくらはぎを、ジェルネイルで尖らせた爪で引っ掻いていた。

(自傷行為だわ・・・)

澪は、ふとチャット仲間の雅人の事を、思い出していた。・・・雅人は、もちろん「仲間」などとは、思っていない。澪の設定では、澪、いや美玖は年上の夫を持つ、欲求不満の人妻と言うことになっている。雅人は、美玖を「俺の奴隷」と呼んで憚らない。

(時間、潰しよ、ただの)

澪は、ぼんやりと、雅人との以前の会話を、思い出していた。

「僕が、君の父親に似てるって?」

「そうなの。・・・父は、政略結婚で私を、20も年上の男に・・・」

「なるほど」雅人は、得意げに言った。「君の父親も、俺も、君の肉体を踏みにじって踏みつけ抜く男と言う訳だ」

YES.

・・・しかし、澪こと美玖が、いや雅人も、だんだんこの「遊び」に飽きた。・・・雅人は、ネットの向こうで、女性を操るだけで、満足するタイプらしかった。

(だから、選んだんだけど)

20も年下の、鷹士の方が、まだしも勇気があったと言えるだろう。


澪が、PCを切ってうつらうつらしていると、チャイムが鳴った。

「杏子さん」

「来て、いいのかどうか、迷ったのだけれど・・・」杏子さんは、忙しくスーパーの袋をもう空けながら言った。「お父さん、私がいないと無理だっておっしゃるのよ」

「ドクターは?」

「お父さんが、電話して許可を取ったらしいわね。・・・ごめんなさいね」

「杏子さんがいないと、私も困るわ」

「よかった」杏子さんは、胸を撫で下ろしたように言った。「さて、今日は魚の日よ」

「あの人、辛い鮭しか食べないんじゃないかしら」

「ご名答。・・・澪さんには、甘塩の買ってきたわ」

「いつも、ごめんなさい」

澪が、レンジの火をつけようとすると、杏子さんは言った。「いいの、いいの、座ってて。・・・疲れてるんだから」

(実の母親でも、こうはしてくれないだろう)

澪の思いには構わずに、杏子さんは両袖をたくしあげて料理を始めた。と、またチャイムが鳴った。

「お父さんよ」

「・・・そうね」

澪が、ドアを開けると、父親は呟くように言った。「鷹士のことだが」

「え・・・?」

「あれを、留学させたのは、わしだ」

「勝手な・・・」

「どっちがだ」父親は、ぶつぶつと言った。「鷹士が、こっそりわしに泣きついて来たんだ。『このままでは、俺の将来は滅茶苦茶になる』と」

「自業自得でしょ」澪は、冷たく言い放った。「あれは、私の最初の男だったのに」

「ふん」父親は言った。「まぁいいさ。・・・わしも、若気の至りで色々したからな。ああ、杏子さん、どうもありがとう」

「どういたしまして」杏子さんはあっさり流した。「さて、焼けたから私は帰ります」

「さよなら」

「また明日」


・・・澪と父親の2日目は、こうして暮れた。

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