にがくてあまい午後

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水面の鳥ーBLUEBIRD-

第11章

「澪」

「・・・いやよ」

「お前は、すぐ怒る。・・・そうすると、わしはどうしていいのか分からなくなる」

澪は、黙って起き上がって、ドアを開けた。

「・・・ケーキが、食べたい」澪は子どものように言った。

「ケーキだな」父親は言った。「この辺に、店はあるかね?」

「コンビニのでいいのよ」

「わしは、好かん」父親は言った。「確か、薬屋の横に小さな惣菜屋を兼ねた店があったな。・・・ちょっと、行ってくるよ」

父親は、鍵を開けっぱなしにして出て行った。澪は、ドアを閉めて思った。

(ケーキか)

(一度も、そんなもの自分から買ってきた事ない人が)

15分ほどして、父親は小さな箱を抱えて帰って来た。

「まだ、あまり品がなかったがな」箱には、小さなロールケーキが2切れ入っていた。

「・・・コーヒーでも、入れるわ」

澪は、コーヒーメーカーにドリップシートを引いて、粉を計量スプーンで計って入れた。やかんで、水を入れると、コーヒーメーカーはしゅんしゅんと音を立て始めた。

「・・・コーヒーなんぞ、淹れられるようになったんだな、澪」父親は、呟くように言った。

「これは、グループホームのおかげよ」澪は言った。「皆の分まで入れると、お手当がでるの。さて、食べましょうか」

小さなケーキは、フルーツが沢山入っていて美味しかった。

「澪、詩はまだ書いているのか」

「・・・最近は、小説よ。勉強の段階だけれど。詩は、S詩人会で書いているわ」

「あの、J先生が立ちあげた所か?」父親は、少々驚いたようだった。「そうよ。・・・どうして、知ってるの?」

「わしは、J先生の所で、息子さんの家庭教師をしていたからな、大学生時代」

「そう・・・」澪は、少々驚いた。

「J先生に、わしは、『無量なるもの』と言う言葉を、教わった」

「無量なるもの・・・?」

「『人知を超えたものは、人知を超えたものにまかせなさい』と言う意味だ」

澪は、思わず呟いた。「ハイヤーパワー・・・」

「それは、なんだ?」父親は、聞いた。

「福山さんが、言っていたの」澪は答えた。「人知を超えたものよ」

「ふん」父親は言った。「福山さんも、たまにはいい事を言うじゃないか」

それっきり、二人は黙ってコーヒーを飲み干した。

「さて、わしはそろそろ帰るぞ」

「・・・私も、洗濯しないとどうしようもないわ」

「わしの分はいい」父親は、慌てて言った。「杏子さんが来たら、TAXYに全部積んで帰るよ」

「じゃ」澪は言った。「そこのソファにでも、座ってて」

澪は、洗濯機に洗剤と漂白剤を入れると、ダウニーを柔軟剤入れに入れた。洗濯機は、勢いよく回り始めた。外は、いつのまにか燦燦と日が降り注いでいた。

(朝だ)

(ようやく、朝が来た)



夕方、杏子さんはいつものように言った。「ただいま」

「お帰りなさい、杏子さん」

「ご主人」杏子さんは言った。「澪さん、何でもできるようになっていて驚いたでしょう?」

「まぁ、な」

「まぁ、じゃありませんよ」

「杏子さんのおかげよ。・・・杏子さんが、何でも教えてくれたから」

「それだけじゃないわねぇ」杏子さんは、明るく言った。「やっぱり、1年間苦労したからよ」

「ふふ」

「私は、悪い事も教えてるしねぇ」

「なに、それ」

「・・・押し売りの撃退法とかなら、ありがたいことです」父親が言った。

「澪さんちはねぇ」杏子さんは言った。「いい人揃いだから」

澪と父親は、顔を見合わせて渋く笑った。

「澪」

「何?」

「・・・しばらく、私は午前中だけでも、来るよ。それで、杏子さんが午後に来る」

「分かった」澪は、素直に答えた。「先生に、相談してみる」

その夜は、杏子さんの揚げた、小海老と玉葱と人参と、茄子とピーマンの精進揚げだった。

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