にがくてあまい午後

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水面の鳥ーBLUEBIRD-

第16章

すっかり、やる気になった澪が、PCに向かってワードを開くと、けたたましく家電が鳴った。

(誰かなぁ・・・)

三分の一うんざり、三分の一あきらめ、三分の一いらいらした気持ちで、澪が受話器を取ると、聡子の声がした。

「なぁに?」

「実はね・・・」聡子は囁くような声で言った。「さっき、人が大勢いるところでは言いにくかったんだけど」

「ええ」

「家の子、実は呼び出されてるのよ」

「非行?」

「違うわ」聡子はきっぱり言った。「もっと悪いの。・・・言いにくいんだけど、ばらさないわよね?」

「誰にばらすの?」

「よかった。・・・実はね、家の子・・・その・・・担任がADHDだ、って言いだしてるの」

「発達障害・・・」

「いやね」聡子は少々声を荒げた。「それで、病気の先輩のあんたに、相談したかったのよ」

「何を?」澪は言った。

「だから・・・その・・・つまり」

「医者の紹介?」

「誰が」聡子はきっぱり言った。「そんな恥さらしな事しなくちゃいけないの?・・・私は、ただ、どこがどう間違っているのかはっきりさせたいだけよ。あの担任・・・何とか出来ないものかしら?ね?」

「私には、分からないわ」

「そう、言わないでよ。・・・あんまりだと、思うでしょ?」

「私には」

「何?」

「スタートラインからして、そもそも間違っているような気がするけれど」

「あらぁ」聡子は、普通を装っているが、激昂してきているのが手に取るように分かった。「あなたのような人に、言われるとは・・・ね」

「何が、言いたいの?」

「甥ごさんの鷹士君、中学の頃から女性経験あったそうじゃない?」

「それが何か?」

「やっぱり」聡子は言った。「遊ばれてたのは、澪サンの方だったって訳ね」

「・・・」

「何も知らない、赤ん坊さん」

「切るわよ」

「どうぞ」聡子は冷たい声で言った。「他のママ友に相談するわ。じゃ、ね」

澪は、受話器を置くと、クッションを思い切り窓にぶつけた。・・・観葉植物の鉢に手をかけようとして、流石に思いとどまった。

息が、切れている。

(そうよ)

(その通りよ)

(私は赤ちゃん)

(そして)

(モンスターペアレントの勝ち組の・・・聡子)

(あなたは私の両親と同じ道を歩んでいる)

振り向くと、きょとんとした父親がいた。「どうしたね、澪?」

「話したくない」

「お前」

「話したくないっ!」澪はクッションを父親の肩越しに投げた。「今日は自分の家で寝て」

「しかし・・・」

「うるさいってば!」

後ろから、杏子さんの声がした。「澪さん、とにかくお父さんにおあやまりなさいな。一体何があったの?」

「言いたくないっ!」

流石の、杏子さんもこれには唖然として、一旦黙った。

「男と女のことよ!それだけよ!」

「澪さん」杏子さんは毅然として言った。「ここに居られるのは、お父様のお陰でしょう?」

「今は誰の顔も見たくないの!」

「こりゃ、だめだ」父親は言った。「一旦、引きあげましょう。・・・澪、一晩頭を冷やしなさい」

二人は、振り向きもせず出て行った。・・・澪は、ソファに座って息を整えた。

(そうよ)

(その、通りよ)

(鷹士に本気だったのは、私の方・・・よ)

(気づきたく、なかった)

雨が、ざあっと降って来た。澪は、寝室に駆け込むとベッドで激しく泣いた。後から後から涙はこぼれて来た。たちまち部屋は暗くなってきた。

居間の、PCだけが暗い部屋の中で、青い光をを煌々と放っていた。

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