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水面の鳥ーBLUEBIRD-

第23章

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自室に戻った澪は、自分でも気がつかない内に、卓也のダイヤルをプッシュしていた。

話を聞いた、卓也は一言の元に言った。

「詐欺だね」

「そう、思うわ」

「断れよ」

「・・・そうも、いかない」

「何故?」

「杏子さんが、期待してるわ」

「24時間TVシンドロームだね」卓也は言った。「何それ?」

「ハンディのある人間を応援したい。・・・真人間にしたい。そういう衝動の事さ」

「杏子さんを、侮辱しないで」澪は珍しく声を荒げた。

「君は」卓也は言った。「本当に、赤ん坊だなぁ。人間には、すべからく二面性があるということが、まだ分かっていない。・・・例えば、君が資産家の娘でなくても、杏子さんは君を応援したと思う?」

「確かに」澪も言った。「今、家の雑事に限らず、会計まで杏子さんが引きうけている状態よ。・・・父も私も、大雑把な計算以外は苦手なの」

「誠実とは、時に最高の武器になるんだよ」

「・・・」

「つまり」

「杏子さんは、最初からこの家の一員になりたがっていたと言う事?」

「もう、なっているじゃないか」卓也は笑った。「そして、君は彼女に振り回されている。じゃ、さよなら」

電話を切って、澪は息が乱れていることに気がついた。

(卓也は)

(いつも私に、本当のことしか言わない)

間髪をいれず、父親から電話があった。

「杏子さんから聞いたんだが」

澪は、うんざりしながら答えた。「何?」

「昨日、BFがお前のマンションに来ていたそうだね」

「・・・杏子さんも、お父さんも仕事の日だったし。いちいち報告しなくちゃいけないの?」

「いや、いや」父親は慌てて言った。「お前も、いい年頃だしそれはいいんだ。ただ、わしはもう要り用でないのかと思ってな」

「別に・・・」

振り向くと、杏子さんが立っていた。

「お父さんから?」

「関係ないでしょ」

「・・・お父様ね、こないだ私に言ってらしたけど、マンション2つを往復するのはもうきついのよ」

「そうなの?」澪は受話器に向かって言った。

「そうなんだ」父親は言った。「わしは、来月から杏子さんと、自分のマンションで暮らすよ」

「分かった」

「元気でな」

澪が、電話を切ると、杏子さんはずかずかと澪の部屋の掃除を始めた。「やめてくれない?」

「どうしたの、一体」

「ひとりになりたい」

「いつも、ひとりじゃないの」杏子さんは、ゴミ箱をひっくり返しながら言った。「何故、言ったの?」

「え?」

「男の子が、部屋に来てるって」

「お父様に言うのは、当たり前じゃないの」

「杏子さんは」澪は癇癪を起し始めていた。「いつから、私の母親になったの?」

杏子さんは、手を止めて言った。「そういう言い方をするの?澪さんは」

「そうよ」

「童話が、お父様の目にかなったのは誰のお陰?・・・そのチャンスを、台無しにするのはわたしの澪さん?」

「出てって」澪はきっぱり言った。

「まだ、ご飯出来てないわよ」

「で・て・いって!」

杏子さんは、わざとゆっくりと上着を着て、帽子をかむるとドアを閉めた。澪は、急に咳込んで来た。ベッドに突っ伏したが、深い咳は止まらない。

(杏子さんは)

(私は、誰の、何を見ていたのだろうか)

咳は、やがて痙攣に変わった。澪は、救急ダイヤルを回しかけて手を止めた。・・・それから、震える手で、一番近い内科の診察券を確かめると、暗い道をタクシーを飛ばして、マンションが背後に消えるのを背筋を真っ直ぐに伸ばして見ていた。
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