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水面の鳥ーBLUEBIRD-

第25章

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翌朝、澪は一通のメールを受け取った。

「試験でこちらに来ています 卓也」

果たして、今日は忘れていた日曜日だった。・・・澪は、メールを返した。

「会いたいの」

「今日は、困るな・・・。そっちへ泊ることになっちまう」

「電話したい」

「全く」

それでも、携帯はすぐ鳴った。

「卓也・・・」

「なに?」

「また、ひとりになっちゃった」

卓也はくくっと笑った。「君の事だから、杏子さんを追い出したんだろう」

「その通りよ」澪は言った。「でも、それ、あなたの望むところでもあったんじゃないの?」

「冗談じゃない」卓也ははっきり言った。「君のような、人間関係のフィルターが甘くて、それでいて、関係を持続させるのが苦手な人間と、深いお付き合いをするのはご免です」

「・・・私は、どこへ行けばいいの?」

「ミーティングは反対だな。あそこじゃ、君はお味噌でしかもアイドルだ。ろくなことにならんよ」

「・・・」

「『仲間』のところへ、戻ったらどうだ?」

「私には、仲間なんていないわ」

「いるだろ」卓也はぼそっと言った。「君の仲間は、世界中にいるよ。ただ君が、それに気づいていないだけだ」

「まさか、障害者仲間のことを言ってるの?」

「だよ」

「私は・・・」

「君が」卓也は静かな声で言った。「人に、何かを与えられるとしたら、そこだけだろうね」

電話は、切れた。澪は頭を抱えた。

(グループホームには、戻りたくない)

(いやだ)

(いやだ)

(でも)

深い気管から出る咳が、またぶり返してきた。澪は、吸入器を2回吸うと頭をもたげた。

(杏子さん・・・)

(謝らなければ、あの人に。私と、世界を繋ぐ糸は、あの人だけだ)

澪は、決心してメールを打った。・・・すぐに、返って来たのは「お知らせ」だった。

(着信・・・拒否)

ごほごほと、深い咳をしながら、澪はベッドに潜り込んだ。あとからあとから、空虚は押し寄せてきた。

(さみしい)

手足が、暖かくなって来たのは数分後だった。

(私は)

(・・・大事にしていなかったのだろうか、杏子さんを)

(いや、卓也の言う、『仲間』を・・・)

(でもわたしは)

(わたしは)

突然、チャイムが鳴った。澪は、警戒しながらドアを開けた。・・・そこには、澪より少し年配とおぼしき、太り気味の中年の女性が立っていた。

「・・・どなたですか?」

「わたし」少し訛りのある発音で、その見知らぬ女性は言った。「お父さんのところから、来ましたよ。ひろみ、言います」

「父・・・?」

「浩市さんですわ」

「私の父ですが」

「世話、しばらくしてくれって、頼まれまして」ゆっくりと、その化粧の濃い女性は言った。「お父さんから、連絡なかったですか?」

「ええ・・・」澪はまた咳込み始めた。

「今日は」ひろみさんは言った。「帰ります。また、来ます。ご挨拶だけ」

「あの・・・」

「お大事にね。・・・喘息、悪くなると、大変です。生姜擦って、はちみつと飲んでね」

ひろみさんは、深く会釈をすると、ドアを閉めた。澪は、苦しさの余り玄関に座り込んで激しくぜいぜいとせいた。

(お父さん・・・)

これが、澪とひろみさんの出会いだった。
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