にがくてあまい午後

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5 被虐

もう、昼は私の世界の一部ではなかった。慌ただしく食事を済ませ、洗濯を済ませ、厭で仕方がない父の世話をして、ひたすら夜を待った。…私は雅人の容赦ない攻めに溺れた。
 なのに。
 ある日、雅人はぽつんと言った。
「もう、帰りなさい」
「え…?」
「ここに、来ては、いけない」
「どうして…?」私は声を荒げた。
「由希には優しい亭主がいる」
雅人には、他に女が、いや奴隷が出来たのだろうか。
「あんな退屈な人…私は、雅人様を愛しています」
「そこだよ…」
「え?」
「母親に…悪戯されたと昨日言ったね」
それは、本当だった。…小学6年生の頃、早くも胸が膨らみだした私を、母はからかった。反抗すると、暗い物置にいきなり連れ込まれた。…母は、意地悪な同級生のように私をいきなり弄った。
「こんなところが、濡れるんでしょう…はしたない」
「いやーーーーっ」
「まだ、生理は始まらないのよね」母は嗤った。「赤ん坊さん、いくら虐めても、ばれやしないのよ。大人しくしてなさい」
「いや!いやぁあああ」
「こんな淫らな子」母は、憎々しげに言った。「どうして、生んじゃったのかしら…。私より胸も大きくって、いやらしい体をして、その内こうやって男に弄られるに違いない、あんたは」
 その記憶は、私の底に深く沈澱して、心の中に巣食った。…何があっても、2度とこんな目には合わない。…私は淫らな女なんかじゃあない。男性と、関係なんか死んでも持たない。生きている限り…。
 また、あんな思いをするのなら。
 でも。
 結果的には、私は3度も同じことを繰り返しているのだ。つめたくひかるきらきらした眼鏡の光と。
「そこだよ」雅人は哀しそうに呟いた。
「僕は…女性を愛せない」
「…」私は、絶句した。
「僕の母は」雅人は続けた。「異様に、執着心の強い女だった…。僕は、母親に支配され管理されて育った。進学も、就職も、結婚も全部あの人のいうままに決めて来た」
「…」
「それで」雅人は続けた。「いつの間にか…僕の中には…女性に対する、憎しみだけが膨らんで行った」
「憎…しみ」
「そうだよ」雅人は、いつものようにクククと笑った。「僕は、憎しみで女性を逝かせることは出来る。でも、愛で逝かせる事は出来ないんだ。これからも、そしてこの先もずっと」
「雅人様」
「様、はもういいよ」雅人は低く呟いた。「由希、君は、PC越しとは言え、僕が初めて自分からクンニをした女性だった」
あ、と私は心の中で叫んだ。
「僕は、由希を愛情で逝かせたかった…」雅人は、もう密かに泣いているようだった。「でも、無理だったんだよ由希」
「私は、何度も何度も逝きました」私は、叫ぶように言った。
「そうかも知れない…。でもこれは、普通のセックスじゃない」
「そんなこと」私ももう嗚咽していた。「最初から…」
「そう」雅人は呟いた。「女に生まれてきた事を、後悔するように」
私の中で、何かがはじけた。
「由希」雅人は続けた。「僕はね…君に、女に生まれてきてよかったと、心の底から思って欲しい」
「雅人さまぁあ」
「そう、思うようになった…」雅人ははっきりした声で言った。「さよなら由希」
 雅人は、自分からチャットルームを退室した。
私は茫然として、何度も何度もあとを確かめた。でも、もう雅人の部屋はなかった。
 その後、2~3日おきに、私はチャットルームを狂ったように検分し続けた。でも。
 雅人は、どこかへ消えた。
 私は泣いた。何日も、何日も自分で自分を、教えられた通りに愛撫した。…でも、もうあの快感は帰って来なかった。数カ月して、諦めた私は玩具を全部茶色の袋に入れて捨てた。泣きながら棄てた。
 それから。
 数日して、父が亡くなった。…私は、あるコールセンターのPCのメンテナンスをする、暖かい雰囲気の技師と見合いで結婚を薦められ、承諾した。…彼は、普通のセックスをする男だった。私は、雅人との付き合いのおかげで、螺旋階段の外に出たのだ。

 だけど、時々。 
あの螺旋階段を堕ちる感覚を、あの痛みを、懐かしく思いだす。
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