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刻印-sin-

第3章

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次の土曜日、講義が終わった後、エレベーターの外に出た葵は途方に暮れた。

(雨だ・・・)

「送って行こうか」

「え?」

振り向くと、そこには黒い傘を持った主税凱男がいた。

「わた・・・し」

「怖がらなくっていいよ、そんなに」

「はい」

「素直だね・・・いや、従順と言うべきか。こないだは、ひとりで随分しちゃったでしょう」

「帰ります」

「ずぶ濡れに、なっちゃうよ」凱男はそういうと傘を広げた。「入っていらっしゃい」

「・・・はい」

「いい子だ」

そのまま、池袋の路上を葵と凱男は歩いた。傘を持った凱男は、この間とは別人に見えた。地下道の入り口が見えてきたところで、葵は小さな声で言った。

「あのう、ここで・・・」

「ほんとにいい子だね」凱男はくすっと笑った。「居酒屋でも寄って行こう、ね」

池袋の街はまだ煌々と明るい。・・・路地を入った2Fの和風の居酒屋に、二人は席を下ろした。

「僕はウーロン茶」

「私も」

「飲めないんだね、お互い」

「・・・」

「君さぁ」凱男はマイルドセブンを取り出しながら言った。「変わってるね」

「え・・・」

「他の女の子みたいに、僕にじゃれついて来ない。可愛いいのに。・・・まるで、ニューハーフの男の子が、好きな男に告るのに迷ってるみたいだ、ね」

「その通りなんです」葵は言った。

「え?」凱男は動じずもせずに言った。「君、男の子なの?」

「そういう風に、育てられました」

「・・・」

「父と母は、私が国立大学に入って、公認会計士になる事を望んでいたんです。でも、落ちて」

「そうか」

「それから2浪して、美大に入りましたけど結局中退・・・。半端なんです」

「人生色んなことがあるさ」

「え?」

「僕ね」凱男は言った。「ここだけの話、昔バーテンしてたの」

「そう・・・ですか」

「その頃、飲み過ぎてね。肝臓がめちゃめちゃさ」

「すみません・・・禁酒してらっしゃるのかと」

「その通りだよ」凱男は煙草をふかしながら言った。「酒が無いと、人生は女だね」

「はい」

「・・・どのくらい、やっちゃったのかな?この間の土曜日は」

葵は硬直した。

「刻印、だね」

「え・・・?」

「僕の事、頭からも躰からも離れなくなっちゃったでしょう」

「・・・」

「素直だね」凱男は優しく笑った。「いい犬に、なりそうだ」

「犬?」

「僕ね、女性を飼い犬にするのが趣味なの。もちろん、ちゃんと調教について来れれば、とっても可愛がるよ」

「あ・・・」

「いやじゃないよね」凱男は煙草の火をにじり消しながら言った。「君も、それ待ってたんだよね」

葵の脳裏を、おそるおそる見たAVの記憶が駆け抜けた。

「ふふ」

「やめてください」

「ふふっ」凱男は言った。「考えてる事、大体分かるよ。ついでに、君の性器のかたちもね。ちょっとクリが細めで、毛は薄め・・・」

「い・・・や」

「いやならいいよ」凱男は平然と言った。「今日はホテルには誘わない」

「・・・」

「君よりいい女、沢山知ってるもの」凱男は立ち上がると言った。「お勘定」

「あ・・・の」

「今晩も、ひとりで、してなさい。よければ、今度大人のおもちゃの通販、教えてあげる、ね」

「ひどい・・・」

「そう」凱男は上着を着ながら言った。「ワルだよ」

葵はそれきり黙った。凱男がグッチの財布を出し、居酒屋の主人は、にこやかに勘定を受け取った。

「悪い男、好きなんだって、自分に正直に認めなさい」

「そんな」

「君の作品、皆の中で一番よく出来てるよ。・・・これは本当のこと」

そう言い棄てると凱男は、黒い傘をたたみ、もう雨のやんだ深夜の池袋を、JR線の方向に消えて行った。

(せんせい・・・)

(今夜も)

(私は眠れない)
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