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第5章

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日曜日。

葵は、思い切って細い紐の黒のTバックを初めてこわごわとランジェリー・ショップで手にした。いつもの店員がこっそり耳打ちした。

「お客様」

「え」

「ふふ・・・恋してらっしゃるの?」

「あ・・・・」

「いつも、大人しめのランジェリーばかりで、折角のスタイルがもったいないなと思っていましたのよ」

「・・・」

「こんなのは、どうでしょう」

店員は、やはり細いリボンの紐だけで腰の横が結ばれている、黒いほとんど透けたTバックを持ってきた。

「わたし・・・ちょっと」

「お年頃でしょう?ついでに、ブラもシースルーはどうでしょう」

・・・押し切られるように、試着室で葵は黒の乳首の透けるブラを身につけた。鏡に映る、自分のはじたない姿に頬を真っ赤にしていると、店員は更にホルターネックの赤いブラ、ビビッドピンクのオープンブラを持ってきた。

「こ・・・れ」

「あら?着られるご年齢と言うものが、ありますもの?うふふ」

結局、何枚かの1万円札を出して葵はそれらのランジェリーを、買った。


しかし。

次の土曜日、恥ずかしさに耐えて、黒のシースルーのブラとTバックを身に付け、流石に白いシャツの上に、ジャケットを羽織った葵に、凱男は全く無関心だった。

その次の土曜日も。

その次の次の土曜日も。

諦めかけた葵は、気を取り直して、講座で言われるままにブラッシュアップした短編をいくつかいつものように凱男のPCのメールアドレスに送った。1時間程して、メールは帰って来た。

「君、何やってるの?」

「え・・・」

「いくら、刺激的な下着を買っても、あの恰好じゃ意味が無いでしょ」

(見抜かれて・・・いた)

「ふふ、君ね、躰をもぞもぞさせてるからすぐ分かっちゃう、講座の最中に」

「・・・」

「あのね」メールはまた脅すかのような調子になった。「あの、ひざ丈スカートいい加減にやめなさい。他の子が履いてるような、ぎりぎりのミニにしなさい。それから、ブラウスは透ける白。でないと作品は読まないよ」

「そんな・・・そんな」

「あ」凱男は涼しい感じでメールを返した。「君にはやっぱり無理な注文だったね」

「わかりました」

「ふふ」凱男は、PCの向こうで大笑しているようだった。「この従順さがたまらない」

「せんせい」

急に、メールは途切れた。

「せんせい?」

「せんせい!?」

ふっと思い直したように、残酷な調子は変わらずメールは来た。

「今、血を吐いたの」

「せんせい!」

「・・・どうしてもね。躰が震えると、飲んでしまってね」

「やめてください」

「ふふ、外は雪が降ってるよ。ホワイト・バレンタインだね。したくなっちゃうね。連休だから、ホテルはどこも満員だね」

果たして、カレンダーに目をやると今日の日付は14日だった。

「主税せんせい・・・確か新宿にお住まいだと」

「そうだよ。それがどうかしたの?」

「わたし、お見舞いに行きます」

「それはだめだ」

「どうしてですか!?」

「・・・これから観たいTVがあるんだよ」

「そんな」葵はもう泣いていた。「わたし・・・その価値もないのですか」

「しつこい子はきらい。切る」

「抱いて下さい」

「だめ」

葵が、お願いしますと打ったが、返信はそこで途切れた。葵は、大声で泣きながらベッドに突っ伏した。頭がぐるぐるした。

(わたしが)

(可愛くないから、いけないんだ)

(あああ)

凱男は、血のべっとりとついたPCとフロアーに置いた座卓の上で、気を失って倒れていた。顔は蒼白だった。

(まだだ)

(まだだ)

(・・・こんな姿を、未来の俺の雌犬に見られて堪るか)

(まだ、俺は、生きられる筈だ)
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