にがくてあまい午後

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第6章

(だめだ)

(だめだ)

(こんなんじゃ・・・だめだ)

葵は泣きながら思った。

(今日がバレンタインなのは分かってた・・・でも、勇気が出なくてとうとう先生に渡せなかった。ストロベリーシャンパントリュフ)

(先生に抱かれることばかり、考えていた)

(わがままだ)

(わたし・・・先生の住所すら知らない。皆、知ってることなのに)

葵は、必死に涙を拭くと、窓の外を見た。雪はしんしんと積もり始めていた。

(さむい)

(自分で・・・なにかしなくちゃ)

PCを閉じると、辺りはもう相当暗かった。葵は、電気をつけると、あまり家具のない寒々としたリビングを見まわした。ぽつんと、32型のTVが片隅にある。

(先生と出会った・・・2時間サスペンス)

時刻は、少し回っていたが、葵はチャンネルを押した。いきなり、女優の声が聞こえてきた。

「見返りを求めるのは、本当の愛ではないわ。・・・躰で男を捕まえようとするのは愚かです」

葵は、頭を殴られたようなショックを受けた。そのまま、コタツの前で顔を両腕に埋めて大きな声を出して泣いた。

(わたしは思いあがっていた)

(元彼も、先生もわたしを嫌がるのはこのせいだ)

ふと、最初講座に参加した日の、凱男のセリフがこだました。

「よい本を読むこと。・・・よい映画を沢山見ること。自分の想像力には限界があります」

(わたしは)

(いろんな面で、多分他の子より劣っている)

(痩せっぽちで、胸も小さくって色気もなくって、料理も左程うまくはない)

(いい女じゃない)

(でも)

「君は書ける子だよ」凱男は優しくそう言ったのだ。

(わたしに出来ること・・・)

(小説を書くこと)

(それだけ)

葵は、気を取り直すとマキシムのステイックコーヒーを、カップに淹れた。甘いキャラメルマキアートを飲み干すと、少し気分が落ち着いた。

(先生・・・苦しいだろう)

(でも、今はわたしには何も出来ない)

(手放そう)

テーブルの上をふと見ると、昨日アマゾンから配達されてきた、谷崎潤一郎の文庫本があった。「痴人の愛」

(もう、どうなってもいい)

(先生とわたしのことを)

(書こう・・・)

雪は、道路にも、窓から見える螺旋階段にも、積もり始めていた。葵は、気を取り直してPCのワードのスペースを埋めて行った。
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