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刻印-sin-

第7章

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土曜日。

いつものように、主税凱男はカルチャーセンターの教壇に立っていた。

「あの先生さぁ」

「え?」

「どSなんでしょう」新しい生徒の、由未が言った。

「確かに・・・サディスティックよね、時々物言いが」

「あら、でも主税先生優しいわよ」なにげなく、古参の紗希子が言った。「できない子にも、それなりに才能を引き出そうとしてる」

「!」

「どうしたの、葵」不思議そうに、唯一親しい加絵がつぶやいた。

(先生・・・優しいんだ)

「そうよぉ」紗希子は言った。「だから、皆、ついてゆくのよね」

それきり、皆はぷっつりと黙った。

(ついてゆきかたが・・・問題だけど)

(でも、わたしは先生に引きずられてる)

(色んな意味で)

「やっぱり、今のTV界の第一人者だもの、主税先生は。・・・人望が、あるのよ、本当の意味で」紗希子はそう、言い切ると、ノート代わりのデルを広げた。

(ふふっ)

(紗希子、最近先生とうまく行ってるみたいね)

(・・・)

それきり、葵も黙ってバインダーを開いた。

(私は分かってなかった)

(優しさとは、自分で自分の道を切り拓いた自信から来るのだ)

(わたしはまだ何も成し遂げていない)

その晩、主税が参加しないと言うので、盛り上がらなかった飲み会の帰り道、加絵はなにげなくしかし真剣に言った。

「葵」

「ん?」

「今度、原稿のストックあったら、私にくれない?」

葵は絶句した。

「お礼・・・何でもする」

「加絵・・・あなた」

「主税先生が、すきよ」

「・・・」

「でも」加絵は言った。「私には才能が無いの、先生に認められる」

「そんなこと・・・」

「あるわ」加絵は叫ぶように言った。「あんたには分からない」

「だからって・・・」

「あなたはいつも、いの一番に原稿を読み上げられてる。僅かだけど、貴重な先生の批評も貰ってる。それなのにのほほんとして、平然として・・・」加絵ははっとしたように黙った。「ごめんなさい」

「・・・」

「私ね、先生と寝られたら何だってするわ」

葵は困り果てて呟いた。「悪いけど、それは」

「あ、そう」

「え・・・?」

「あなた」加絵ははっきりと思いつめた声で言った。「来週から、皆に虐められるわよ。私がどれだけ、鈍いあなたのフォローを陰でしてきたか、ちっとも分かっていないのね」

「・・・」

「さよなら」加絵は走るように逃げるように去って行った。「もう友だちやめるわ、じゃあ」

葵は、池袋の交差点の信号待ちで、ぽつんと取り残された。

(虐められる・・・)

(また)

その晩、書きためた原稿を前に葵はリビングで頭を抱えた。・・・知らず知らず、あの番号をプッシュしている自分がいた。

「主税・・・先生」

「やあ」意外に張りのある声が、帰って来た。「どうしたの」

「わたし・・・実は」

「ふふ」凱男は微笑った。「どう、したの」

「そ・・・の」

「僕に依存する気ならやめなさい」凱男はきっぱりと言った。「ただし、条件がある」

「あ・・・」

「分かってるね。僕の奴隷になる気があるなら、話は全く別だ。いくらでも庇ってあげよう」

「・・・」

「どうするね」凱男はいたぶるように続けた。「自分じゃ、何も出来ないんだろう、君は」

「実は」

「ん?」

「また・・・書いたんです」

「ああ、短編ね」あくびをするように凱男は言った。

「違います」

「え?」

「長編・・・です。まだ冒頭ですが」

「ほぉ」凱男はふふっと笑った。「何を書いたの」

「先生と・・・私の事を」

「・・・」

「でも」葵は続けた。「まだ、何も始まっていない」

「そうだね」凱男は呟くように言った。「面白い・・・面白いな。それで」

「私を、先生の、愛人にしてください」

「OK」凱男はあっさりと言った。「僕は人のいやがることはしない」

「本当ですか」

「もちろん。ここまで来たのは、君の意志じゃないか。違うかい?」

「そうです」

「分かったよ。今日はもう出掛けるんだ。明日、ゆっくり見せて欲しい」凱男はのんびりした普通の語調で言うと、電話を切った。

(ついに)

(ついに)

葵はこの時、ここまで、自分が危険な領海に踏み込んだ事に気づいていなかった。
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