にがくてあまい午後

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籠の鳥ーJAILBIRD-

第十六章


「家庭機能研究所」

亜美は、ためらわずにその自動ドアをくぐった。この3Fが、今日の目的地なのだ・・・

意外と狭いエレベーターを降りると、白い扉の前で、冴えない感じの初老の男女が、受付をしていた。

「あのう。”あなたの家庭はどこかへん?”の会場は、ここですか」

二人は、訝しげに亜美のいでたちを覗き込んだ。

「そうですよ。・・・受講料、3000円」

亜美は、あっさりと財布を開くと、千円札3枚を、小さな箱に落とし込んだ。まだ、不思議そうに見つめる二人の視線を後に、亜美は部屋に乗り込んだ。

・・・そこには、亜美がよく知っている人間たちが、いた。亜美は少々驚いた。

無印良品の服を着て、ボールペンを常に携帯し、指には高価なリングを嵌めた人達。・・・そう、ずばり「勝ち組」の、カウンセラー達なのだ。亜美には、一瞬にしてそれが読み取れた。

だてに、4才からこの人達にお世話になってきたんじゃないわ。

・・・そうは言っても、亜美自身、今は少し脅えているのが分かった。・・・私は、今、ひろきさんの眼で、彼から貰った眼でこの人達を見ているのだ。

ひろきさんが、3台の車をやっとの思いで洗車する事によって得るお金を、ただエラい人のエラい話を、聞くためだけに、財布からひょっと出せる人間たち。

亜美は、一番前の椅子に座った。

間もなく、先生がやって来た。・・・どくとるマンボウの前に、亜美が通っていて大喧嘩を繰り広げた女性の医師に、少し似ている。地味だが、万単位の服を着こなしていることを、亜美はすぐに見抜いた。

木崎の、地味なGパンとも、えらい違いだ。

先生は、一礼する前に、コップの水を少し飲んだ。それから、おもむろに喋り始めた。

「ここでは、家庭の中の”共依存”について、お話したいと思います」

先生は、黒板に2つの丸を書いた。・・・重なり合っている2つの丸。

「これが、”共依存”の状態です」

聴衆は、シーンとしている。更に、先生は次の2つの丸を書いた。離れたところにある2つの丸。

「これが、健全な状態です」

亜美は、少しきょろきょろした。さっきの、冴えない2人組が、亜美のひとつ離れた席に座っている。

先生は、構わずに話を続けた。

「・・・しかし、この定義以上に病んだ家庭も、世間にはあります。・・・私は、今日、それをふいに思い出しました」

女の先生は、亜美の青白い顔をまっすぐに見た。

「ヨーロッパか、アメリカでしたか、私には確信がありません。ここで、今日、あえて予定を変えて”ある少女”の話を、私はします。これは一つの謎々です。・・・皆さん、どんどん質問をするように」

無印良品の群れは、沈黙した。・・・亜美もまた、今、初めてまっすぐにこの女の先生の顔を見ていた。
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