スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←朝と夜 →第24章
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



もくじ  3kaku_s_L.png Morning Glory
もくじ  3kaku_s_L.png Black short short
もくじ  3kaku_s_L.png DOWN BEAT
もくじ  3kaku_s_L.png 刻印-sin-
もくじ  3kaku_s_L.png あとがき
もくじ  3kaku_s_L.png 現実の林檎
もくじ  3kaku_s_L.png 短編いくつか
もくじ  3kaku_s_L.png その後の短編
【朝と夜】へ  【第24章】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

刻印-sin-

最終章

 ←朝と夜 →第24章
オレンジ色の朝日が、ようやく雲の切れ目から姿を見せた時だった。

「先生?」

「ごほっ・・・ごほ、ごほ」凱男は大量に吐血した。「ぐふっ」

「せんせい!」葵は悲鳴をあげた。「ふふ・・・こんな時が・・・来ると思ってた」

「やめて下さい」

「こればっかりはね」凱男は苦しげに言った。「僕の意志でも、どうにもならない」

「・・・」

「苦しい、な」凱男は言った。「頭を抱えていてくれないか」

葵は黙って主税の頭を抱きかかえた。「天罰だ」

「そんな・・・」

「いや、そうだよ」凱男は息を切らせながら言った。「何人もの女を地獄に堕として来た・・・僕にふさわしい」

「いや」葵はとめどなく泣き出した。「・・・いやです」

「神・・・か」凱男は言った。「罪作りな名を、つけてくれたものだ」

「!?」

「僕はね」凱男はささやくような声で続けた。「孤児なんだよ」

「だって・・・お父様が・・・」

「あれは育ての父だ」凱男は呟いた。「ついてない・・・ついてない場所に、孤児院から養子に出された」

「・・・」

「そこから」凱男は続けた。「這い上がるのに、40年かかった。TV作家としてトップの座を築くまでにね。だがもうそろそろ終わりだ」

「終わりにしないで下さい」葵はしゃくりあげながら言った。「君の、せいだよ」

「!?」

「君は、僕を、超えてゆく」

「・・・」

「そういう運命だったのさ」凱男はふっと笑った。「出会った時からね」

「私にはそんな才能はありません」

「自分で、そう思っているだけだ。・・・君はいずれ僕の名を超えてゆく。TV作家としてではなく・・・純文学の作家として」凱男は、血の塊をごふっと吐き出した。「君に、嫉妬した僕は」

「・・・」

「それが、命取りだったね」

「どうして・・・どうして」葵は繰り返した。「ミイラ取りがミイラになった」

「先生!」

「もう、いいんだよ」凱男は血のついた唇で言った。「君には、僕より強力な神さまが、ついているじゃないか、ふふ」

「そんなものは・・・そんなものは・・・」

「要らない」凱男は呟いた。「か」

「・・・」

「君を、もっと早くもっと確実に堕とすべきだった、ね」

「・・・」葵は震えながら泣いていた。「行きなさい」

「どこへ・・・?」

「君の信ずるところへだ」凱男は最期の声をふり絞って言った。「僕には連れてゆけない。・・・ついてゆく事も出来ない」

凱男は、そのまま頭を下げたまま動かなくなった。「先生!」

「・・・」

「せんせい、せんせい、せんせい」

答えはなかった。

葵は、主税の頭を抱えたまま、空を見上げた。オレンジ色の太陽は、もはや薄い黄金色に変わって、二人の頭上にきらめいていた。

(先生)

(あなたが教えてくれた事・・・)

(天なる神には、教えて貰えなかった事)

(人間の性)

(・・・私は書きます。これからも、そして一生書き続けます。)

神、こと主税凱男は、静かに葵の腕の中で息を引きとっていた。
関連記事



もくじ  3kaku_s_L.png Morning Glory
もくじ  3kaku_s_L.png Black short short
もくじ  3kaku_s_L.png DOWN BEAT
もくじ  3kaku_s_L.png 刻印-sin-
もくじ  3kaku_s_L.png あとがき
もくじ  3kaku_s_L.png 現実の林檎
もくじ  3kaku_s_L.png 短編いくつか
もくじ  3kaku_s_L.png その後の短編
【朝と夜】へ  【第24章】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 現在非公開コメン卜投稿不可です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【朝と夜】へ
  • 【第24章】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。