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にがくてあまい午後

試練

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けいちゃんがいない就労支援所は、試練の場だった。

ちょうど、TVではうるさいくらいロンドン五輪を放映してた。頑張れニッポン。元気になりました。

あたしは、けいちゃんが休んだ次の次の日、なんとなく殺気立ってるスタッフの前で、うっかりビール代わりのパインジュースを片手に、「シューローシューロー、イエィ」と言った。

たちまち弾丸は返ってきた。

「あのね。・・・体の調子が悪かったり、お金があって働かない人のことを、悪く言ってるんじゃないのよ。働くのは、社会に参加するのでいいことだけど、差別はよくないもの」

なら、そういうこと言うなよってあたしはのどから出かかった声をぎゅっと押し込んだ。・・・もう就労した、うすぼんやりした単純作業にピッタリな子が、うきうきと近づいてきた。

「あたし、初めて稼いだお金でジュース買ったんですう。暑いから、皆さんで飲んでください」

ビターシュエップスとかなんとかいうその炭酸飲料には、148円と言うラベルがついたまんまだった。あたしたちは、四人でそれを湯呑に注ぎ分けた。・・・苦かった。あんたの爪の垢の味がするよ、煎じていただいてますと言おうとしてやめた。

「ほんとにえらいわねぇ」

あたしは、五日間続けてビーズ細工をしたので、少し目がかすんでぼおっとしてた。目がかすむのは疲れのせいだけではなかった。

「帰ります」

そういって、あたしは就労支援所のドアを荷物をひっつかんで思いっきり開けた。

仕方ないのだ。

今、緩衝剤であるけいちゃんがいない。・・・みな、自分の感情を持て余してそれを手近な人にぶつけているだけだ。

でも。

マンションに帰って、窓を開け放ってベッドで寝転んでいたら涙が出てきた。けいちゃんがいないとあたしのストレスは二倍三倍になる。痛いくらいに、人の悪意が体の芯にじーんとしみた。

ふいにメールがちゃららららと鳴った。編集部の河嶌さんからだった。

「ご本の定価は九百円に抑えることが出来ました。強い、ご希望でしたので」

嬉しくって、涙は止まった。あたしの初めての初めての自費出版なのだ。そう、けいちゃんにも絶対絶対読んで欲しい。

けいちゃんの目の下のあざにキスしたいなって、あたしは急に思って枕に顔をうずめた。外では入道雲が動いている。

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