にがくてあまい午後

スポンサー広告

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
もくじ  3kaku_s_L.png Morning Glory
もくじ  3kaku_s_L.png Black short short
もくじ  3kaku_s_L.png DOWN BEAT
もくじ  3kaku_s_L.png 刻印-sin-
もくじ  3kaku_s_L.png あとがき
もくじ  3kaku_s_L.png 現実の林檎
  ↑記事冒頭へ  
←第17章    →第16章
*Edit TB(-) | CO(-) 

にがくてあまい午後

怒り

だけど、ことは思ったようには運ばなかった。

土曜日、けいちゃんに寄せ書き書いてよ、とあたしは思い切って一番仲のいい小池に頼んだ。だけど、小池は言った。

「まだ少し早いんじゃん。・・・ほっといた方がいい気もする。どうしてもっていうなら、お盆明けでもいいじゃん」

「ん・・・」

「敦美ちゃん、近藤さんのこと好きなの?」

「え?」

「・・・あの人さ、スタッフだけど鬱っぽいみたいだよ、前から」

「そうなの?」

「やめときやめとき」

あたしがビターシュエップスを貰って心の中で悪口言った、佳奈美ちゃんがふと言った。

「わたし、書いてもいいけど・・・」

「頼める?」

「うん」

寄せ書きは、二人分になった。だけど。

お昼休みに、色紙を見せたらしっかりした元木さんも言った。「今はそおっとしておきなさい、ね」

あたしはいよいよ落ち込んで、その午後はパッチワークを何とか仕上げるととぼとぼマンションへの道を歩いた。日差しはきつかったけど、空気に秋の匂いがした。

マンションで、鯖の唐揚げとご飯を食べた。・・・考えるのはけいちゃんのことばっかりだった。こたつに寝転んで、PCを開いたけどだるくて寝てしまった。

フェイスブック。

ふと、あたしは座布団から跳ね起きて、けいちゃんの面接を思い出していた。

「僕、野球が好きで」

「昔、北区に住んでました。生まれたとき」

「好きな作家は、村上春樹とサリンジャーとカート・ヴォネガット」

近藤啓介。

あたしは夢中で、フェイスブックを検索した。すぐに答えは出てきた。

「Keisuke Kondou」

そこには、あたしの知らないけいちゃんがいた。・・・髪が今よりさらに短くて、イ・ビョンホンみたいな口髭たくわえた、トップページの写真。だけど間違いなく、あの細い神経質そうな目はけいちゃんのものだった。

「いいね!村上春樹、サリンジャー、カート・ヴォネガット」

やっぱり。

あたしは殆ど、何も考えずにいきなり友達申請を送信した。・・・これが、やっと繋がった細い細い糸だと思いながら。

だけど。

次の日になっても、その次の日の朝になってもレスポンスはなかった。けいちゃんは、寝込んでるんだろうか。

軽率なとこのあるあたしは更に、メッセージを送った。

「お体の様子がわるいようで心配です。急に友達申請してわるかったと思ってます。だけど、安否だけでもメッセージで知らせてください」

打った後、あたしははっとした。

けいちゃんには。

けいちゃんの世界がある。

あたしにも、知られたくないことが。

迂闊だった。

・・・次の日にも、メッセージは来なかった。

けいちゃんに嫌われたのかも知れない、とあたしは暗くなった。だけど、何にも来ない画面を見ているうちに、腹も立ってきた。

勝手に落ち込んでればいいじゃん。

あたしは息を吸って、メッセージを削除した。

">
関連記事
もくじ  3kaku_s_L.png Morning Glory
もくじ  3kaku_s_L.png Black short short
もくじ  3kaku_s_L.png DOWN BEAT
もくじ  3kaku_s_L.png 刻印-sin-
もくじ  3kaku_s_L.png あとがき
もくじ  3kaku_s_L.png 現実の林檎
  ↑記事冒頭へ  
←第17章    →第16章
*Edit TB(0) | CO(0)

~ Comment ~















管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


  ↑記事冒頭へ  
←第17章    →第16章

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。