にがくてあまい午後

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にがくてあまい午後

相手ありき

次の日は、あたしは遅く目を覚ました。・・・TVでは、ロンドン五輪の閉会式をやってた。寝坊したから、大好きなブライアン・メイもケイト・ブッシュも見られなかった。よぼよぼになったロジャー・ダルトリーが最後に歌ってるだけだった。

最悪だ。

あたしは落ち込んだ気分のままで、東京事変を聞きながら、もう一度けいちゃんのフェイスブックを無意識に開いていた。

「言語・日本語、韓国語、英語」

・・・どうにも気になる一節だ。

ちょうど、ニュースでは李大統領の竹島訪問を騒いでいた。あたしは寝っ転がって考えた。

けいちゃんの感情表現のストレートな訳。

魚のホイル焼きに、マヨネーズをかけるとこ。

支援所でなんとなく孤立してる理由。

・・・考えながらいつのまにか、またうつらうつらしてると、支援ヘルパーさんの佐藤さんがベルを鳴らした。あたしは慌てて飛び起きた。

「いらっしゃい」

「暑いわねぇ、自転車で子どもにぶつかりそうになってアスファルトで転んじゃって。体のあちこちが痛いわ」

「・・・今日は、私やりましょうか?」

「いいの、いいの、無理しないで」

それでも、あたしと佐藤さんはいつものように一緒に掃除をして、そうめんと野菜のてんぷらを作り始めた。あたしは大根としょうがを下して、ゆだったそうめんを一口ずつ、巻いたけどへたっぴだった。

「上手よ」

「・・・そんなことないです」

「落ち込んでるわねぇ」

「こないだ、電話で言ってた指導員さんが休んでて・・・」

「あらまぁ、それで元気出ないの」

「はい」

「どういう人?」

「就労、就労って言わない人」

「そう」

あたしは、佐藤さんのこういう、順を追って人のペースで話をきいてくれるとこが好きだ。

「でね・・・」

ふと、あたしは気がついた。

あたしは。

けいちゃんに対して、いっつも自分のペースでことを進めようとしてたことに。

でもけいちゃんは。

あたしとは別のひとりの人間で、苦しいときもあれば返事をしない権利もあるのだ。

「どうしたの?」

あたしは、できるだけ努力して佐藤さんの目を見ながら答えた。「勝手に、その人のSNS調べてメッセージ送っちゃったんです」

「それは、別にわるいことじゃないし・・・」佐藤さんはねぎを刻みながら言った。「病気で寝てるのかも知れないし、入院してる可能性もあるんじゃない?」

佐藤さんの言うとおりだ。

「うん」

「泣かないで。・・・待ってらっしゃい」

その夜、ひとりでそうめんを食べた後、あたしは少ししゅんとして、思った。

けいちゃんに返事くれ、というのはよくない。

どうして返事くれないの、というのもあたしの勝手だ。

あたしはめずらしく、考え考えもう一度メッセージを書いた。

「こんばんは。気になって検索してたら出てきちゃいました。すみません。・・・だけど、所長さんによれば復帰のめどもついてないそうで、とても心配です。お体の具合はどうですか。ゆっくり静養なさってください」

送信ボタンを押すと、あたしはもうこのメッセージのことは忘れようと決心した。

外は湿った空気が流れ込んで、雨になりかかっていた。

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