スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←その1 →第十七章
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



もくじ  3kaku_s_L.png Morning Glory
もくじ  3kaku_s_L.png Black short short
もくじ  3kaku_s_L.png DOWN BEAT
もくじ  3kaku_s_L.png 刻印-sin-
もくじ  3kaku_s_L.png あとがき
もくじ  3kaku_s_L.png 現実の林檎
もくじ  3kaku_s_L.png 短編いくつか
もくじ  3kaku_s_L.png その後の短編
【その1】へ  【第十七章】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

籠の鳥ーJAILBIRD-

第十八章

 ←その1 →第十七章

亜美は、地下のエレベーターの扉が開いた途端、ツンとする匂いと、辺りの暗さに驚いた。

(ここ、何・・・?)

黒っぽく変色した、壁と床と古びたソファー。50円のお茶の自動販売機。十数人の、空ろな顔つきをした、少女達。と、中年の水っぽい感じの貧しげな女性一人。そして、さっきの冴えない初老の二人組。(よく見ると、女性の方はユニクロの男物を着ていた。)

そこには、およそさっきの「天国」とは正反対の世界が広がっていた。

「ようこそ、サヤンへ。では、これから、分かち合いをはじめます」

数人の少女が微動した。・・・暗くてよく見えないが、年代物のいい服を着ているのが亜美には見てとれた。しかし、彼女らの靴は例外なく汚れていた。

「亜美さん、こんにちわ。これからあなたはサヤンの仲間です。・・・では、『平安の祈り』を唱えた後、時計周りに各自が話したいことを話して下さい」

亜美は、おずおずと周回しているソファの一番隅に座った。一番幼く見えるやせっぽちの少女が、おもむろに話し始めた。

「私は、摂食障害でこんなに太っています。だから、男性から見て魅力がないんだと思います」

(違う)

別の少女が話した。

「父は、私を嫌っています。ヨーグルトにジャムを入れるといらいらします。でも、りぼんのついたこんな靴を買ってくれます。・・・父に好かれたいです」

(違う)

またもう少し年配の少女が話した。

「私は、殻にこもったように家にいて、もう10年になります。・・・でも、私は信じています。いつかきっと、私の落ち着いた魅力を分かってくれる男性が現れると」

(違う)

(違う。・・・違う。そういう事を言っているから、そこで黙っている、あの水っぽい女性のようにいつかはなるのだわ)

・・・最後に、冴えない年配の女性が話した。

「私は、頭がいいからと医学部を父に薦められました。・・・でも、二浪して落ちました。それからずっと、父の意の添うように生きてきたつもりです。でも、結果的には佐伯先生に、『折り合いをつけることを学ぶこと』と言われました」

(違う。違うわ。・・・それは、貴女が可愛くなくて、お父様が口実を使って貴女を遠ざけただけよ。)

少女達は、「佐伯先生」の一言に、大きくうなずいた。それは、まるで宗教のようだと亜美は感じた。

「さぁ、最後に、亜美さん」冴えない初老の女性が促した。

「わたしは・・・やくざのタクシーの運転手さんを、好きになりました・・・」

少女達(というには、亜美と同じく随分年を喰っているのが、薄暗い中からももう見てとれた)の、だらしない表情が少し変化した。

「それで・・・男性の魅力とは・・・お金や地位だけではないと、思いました」

少女達は、呆れたようにつぶやいた。

「それは、そうでしょう」

(違う。・・・違う。貴女たちは、私の言ったことの意味を、まるで理解していない。・・・ただ、親から教えられた台詞を繰り返しているだけよ)

「私の母は、『あたしが亡くなったら、”まりもの家”に行けばいいじゃぁないの、』と言います」

少女達は、少しざわめき始めた。・・・初老の女性が、とりなすように慌てて言った。

「ああ、まりもね。・・・あそこのボランティアさんの作った昆布、私毎年買っているのよ」

亜美は、席を立った。

「私、もう帰ります」

外に出ると、夜気がひんやりと冷たかった。亜美は思った。・・・木崎は、これを教えてくれたのだ。ひろきさんの意味を理解しなかったら、こうなるという私の将来の姿を。

少女達も、いつしか外に出てきてTAXYを拾っていた。
関連記事



もくじ  3kaku_s_L.png Morning Glory
もくじ  3kaku_s_L.png Black short short
もくじ  3kaku_s_L.png DOWN BEAT
もくじ  3kaku_s_L.png 刻印-sin-
もくじ  3kaku_s_L.png あとがき
もくじ  3kaku_s_L.png 現実の林檎
もくじ  3kaku_s_L.png 短編いくつか
もくじ  3kaku_s_L.png その後の短編
【その1】へ  【第十七章】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 現在非公開コメン卜投稿不可です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【その1】へ
  • 【第十七章】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。