にがくてあまい午後

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にがくてあまい午後

不在

一週間たっても、けいちゃんは戻ってこなかった。

あたしは、ぼんやり芹田とつきあってた頃の自分を思い出してた。・・・あたしは今よりもっと細くて、芹田は背が高くてかっこよかった。地震の時、どちらともなくメール交換するようになって、そんで付き合い始めた。

芹田はデートがうまかった。

いっつも、割り勘ではあったけどお洒落で高い店を選んでくれたし、あたしが泣くと、すぐに薔薇のチョーカーを買ってくれた。・・・当時、芹田は地方にいたから、交通費も随分かかってたのだろう。

だけどあたしは、なぜか顔に見せるほど内心、盛り上がってなかった。・・・一、二度、あたしのマンションでご飯たべさして、一度は朝まで泊まって行ったけど、お互いリビングと寝室の壁をへだてて寝てるだけだった。

あたしが、まじでリビングに布団敷いたのがわるかったかもわかんない。でも、芹田は何にも言わなかった。・・・結構弱気なとこがあるのだ。

三か月たってもそんなんだった。

芹田は、結局自分から最後通牒を突き付けてきた。・・・あたしが理不尽にわめくと、小さい声で「一緒に病院行こう」って言った。けども、主治医が拒否したので、そこで関係は終わりになった。

あたしは芹田に何を求めていたんだろう?

友達はみんな「あたしがわるい」って言った。「芹田いいやつだしカッコいいじゃん。なんで結婚しないの」

たぶん。

あたしは、常識にふりまわされて芹田を選んだのだ。

芹田と再会したのは、大みそかだった。二人で、いつにない雰囲気であたしのマンションで紅白を見た。・・・だけど芹田は、あたしをハグしてキスしただけで、除夜の鐘が鳴る前に中座して出て行った。たぶんそのあと本命カノに会ったのだ。

あたしは泣いた。・・・だけどそれ以上に、芹田は賢かった。

あたしが、それ以上を望んでいないことにどっかで芹田は気づいていたのだ。だから、本当は芹田は「ブランドもの着たくず」ではなかった。

でも、芹田はわかってなかった。

あたしが、常識的な結婚をしたがっていたこと。それ以上に、芹田に愛されることで、世間に普通の居場所を求めていたことが。

あたしもずるかった。ずるいというより自分がよくわかってなかった。

・・・そんなことを考え考え、うつらうつらしてたらベルが鳴った。

「やあ」

「パパ」

「・・・元気ないと思ってな。お土産買ってきたよ。冷蔵庫に入れといてくれ」

「ん」

パパがトイレに行ってる隙に、ふとスーパーの袋の中をみたら、くきわかめだった。・・・あたしはうんざりした。これはパパの好物だ。あたしの好物ではない。

「就労支援所、やめるのか」

「うん・・・」

「いいさ、やめて」パパは伸びをした。「馬鹿にされるんだろう、役に立たない障害者だって」

「うん」

「そんなとこ行かなくていい」

「・・・」

「パパが言ってやるさ、『一生懸命やってたけど適応無理でした』って」

(そんなこと言われたら、余計いやじゃない)と、内心思いながらあたしは曖昧な表情でそばをゆでていた。

「頭痛いなら寝てなさい」

「・・・今、おそばゆでてるし」

「そっかそっか」

どうもパパは、あのママと意外とにてるところがあるのだ、とあたしははっと気づいた。あたしの気持ちなんかどうでもいいところ。

それでもあたしは黙って手を動かした。

「あげ茄子そばできたよ」

「ざるでいいのになぁ」

もう。

パパが帰った後、あたしはまたぼんやりしてた。・・・頭が痛かった。いっつも人に無視されてると、頭痛がする。

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