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にがくてあまい午後

理想

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月曜日。

あたしは、宛名書きした献本の入った厚ぼったい封筒を十冊、自転車の荷台に積んで、勢いよく郵便局へ発進した。汗ですっぴんにつけた海用の日焼け止めが、流れ落ちそうだった。

郵便局は涼しかった。けど、係員の人はどさっと積んだ封筒の山を、確認して言った。

「二千円です」

あたしはその場にぶっ倒れそうになった。じゃがりこ二十個分だ。・・・ううん。しかも、この四倍まだ献本は残ってる。合計金額はざっと考えて、お米五袋分よりまだ高い。

本って、送るだけでこんなお金かかるのか・・・。

しかも。

支援所に行ったら、(メンバーに売ることはもとから考えてなかったけど)やさしい元木さんもはっきり言った。「ここに一冊、贈呈してくれるんでしょ?じゃそれ読むわ」

やっぱり。

今どき、例え九百円でも、お金出して(しかも無名の)本買う人なんて、よほどの物好きなんだ。

実はあたしは、あの晩から頭を絞って、知ってる限りの本のわかりそうな知人と、あと有名な人に丁寧なメールを添えて献本したのだ。・・・だけど、後で調べてみたら、新聞とかで推薦されてる本って、やたら難しいわけわかんない本ばっかりなのだ。

あたしはそれでも、気を取り直してペットボトルのカバーをちくちく縫った。

「だいぶうまくなったじゃないの。最初、敦美ちゃんのまつり縫いとか見たときは、正直『どうしよう』って思ったのよ」

「へへ」

「できたの、お店に並べてきましょう」

・・・お店はがらんとしてた。あたらしもの好きの、この辺の奥さんが障害者の店に飽きたのもあるだろう。でも、本当の原因は地震以来の不況だ。

「なんか、売れる陳列とか考えないとね」

それでも、あたしと元木さんは雑多な手芸品をできるだけ綺麗に並べた。

「敦美ちゃん」

スイーツ担当の、佐々貴さんがカウンターの中から話しかけてきた。「金曜日、空いてるの?」

「なんでまた・・・」

「レジ担当の、亀居くんが就労しちゃったのよ。敦美ちゃんにお願いできないかな」

「ええと・・・」

「無理はしなくっていいけど」

「涼しくなったら考えます」あたしはもごもご言って、逃げるように店を出た。接客は、気を使いすぎるあたしにとって、ものすごく疲れるのだ。

その晩。

なんとなく、フェイスブックを開いてたら、またしてもショックなできごとにぶつかった。

「結婚しました!」

ぶ。

あたしが、ちょっといやかなり憧れてた、小説講座の江崎さんだった。しかも、相手の写真入り。

その写真をあたしはまじまじと見た。

どう考えても、いわゆる美人ではない。・・・普通の人だ。

なんで?

江崎さんは、いわゆるオタクでどっちかというと背が高くて、あったかい人で、だけどただ、あたしの苦手なAKB48のファンだった。てっきり、ああいう可愛い人と結婚すると思ってたのに。

江崎さんは、ちなみに電車の方向が同じだったので何度か一緒に帰った。

あたしはなんで結婚できないんだろう。

・・・自分の理想が高いのかと思ってたけど、そうじゃなくって単に、自分に自信がなくって押しが弱いのかも知れない。というか悪い意味で不器用なのかもわかんない。

みんな、どんどん好きな人とやっちゃって結婚してるのになぁ。

あたしは決めた。

土曜日には、ひさしぶりに高ちゃんと会おう。

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