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にがくてあまい午後

休み

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次の日。

あたしは、早起きしてダウニーで洗濯したけど、ものすごく頭が痛かった。・・・それでも、我慢してハムエッグとハッシュドポテトを焼いて、にんじんとレタスのサラダを作って、イングリッシュマフィンと食べた。

そのうち、あたしはけだるくなって眠り込んでしまった。気がつくともう十一時だった。

(いっけない)

あたしは、初めて自分から支援所に電話した。

「やあ」

「風間さん」

「どうしたの?」

「今日、出るつもりだったけど、疲れて眠っちゃったんです」あたしは正直に言った。

「そう」

「・・・今日、洲村さんいますか?」洲村さんとは、落ち着いた感じのビーズ細工の先生だ。

「いるけど」風間さんは、ちょっと電話口からいったん離れて言った。「午前で帰るみたい」

「じゃ、今日はお休みします」

「やっと、連絡できるようになったね」

「はい」あたしはちょっと恥ずかしくなって言った。「出る曜日もはっきり決まってなくて、すみません」

「手芸は、待ってる人いないからいいけど」風間さんは続けた。「就労のためには、きちんとする習慣つけた方がいいね」

「はい」

「何曜日、来れる?」

「第二を除いた火曜日と、金曜日なら」

「わかった」

電話は切れた。

(就労のため、かぁ・・・)あたしはふと、髪の毛に手をやった。夏中、結んでたのでぼさぼさだ。

ひさしぶりに、なんと美容院に行くことにあたしは決めた。(身だしなみも大事だもんね)

しかし。

半年ぶりに、席につくと、差し出されてきた雑誌はなんと「INRED」じゃなくって「STORY」だった。

げ。

とほほ。あたしは大きな鏡の中の自分をまじまじと見た。・・・もうおばはんですよ、って言われてるのと同じだ。確かに、ほうれい線と目の下のしわが目立ってきてる。

(回復すると、玉手箱から出たみたいに老ける、って言ったの誰だったっけ)

それでも、男の美容師さんにシャンプーされてるとあたしはなんだかむずむずした。・・・何だかけいちゃんにシャンプーされてるような気がするのだ。

いつか見たドラマをあたしは思い出してた。・・・酔っ払った田村正和を、岸本加世子が介抱するのだ。お礼に、加世子は正和に髪をシャンプーしてもらう。

(してもらうなら、シャンプーの方がロマンチックだなぁ)

ばさっと切った、髪はここちよかった。長さは変わってないけど、ルーズな感じにだいぶ削いでもらった。

「四千二百円です」

「はい」

あたしは外に出た。・・・陽光はもうそんなにきつくなかった。

(けいちゃんに、なんて書こう)

「好きです」とか。

「大切にしてくれてうれしかったです」とか。

「もし、退院できたら連絡ください」とか。

ふと、気づくとマンションの前でうろうろしてる六十くらいの、耳の辺が白髪になった男の人がいた。

(?)

「こんにちわ」

「こんにちわ・・・」その人は、うつむいて挨拶を返した。

あたしはびっくり仰天した。それは、昨日、小説を送ってきた新城智仁さんだった。

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