にがくてあまい午後

スポンサー広告

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
もくじ  3kaku_s_L.png Morning Glory
もくじ  3kaku_s_L.png Black short short
もくじ  3kaku_s_L.png DOWN BEAT
もくじ  3kaku_s_L.png 刻印-sin-
もくじ  3kaku_s_L.png あとがき
もくじ  3kaku_s_L.png 現実の林檎
  ↑記事冒頭へ  
←秋の風    →5 被虐
*Edit TB(-) | CO(-) 

にがくてあまい午後

一日

次の日は穏やかな日だった。雨はかすかに降り続けてたけど、あたしは健康診査へ行った。内科は静かで空いていた。検尿をして、身長と体重を測っておへその周りを測った。

「80cmです」

う。

これは完全にメタボ予備軍だ。

去年の末、芹田と別れてから半年くらいあたしはずーっと落ち込んでた。毎日毎日、ただご飯を作って洗濯して掃除して泣いてた。・・・風の具合や、雨の音が気になってきたのが六月ごろだったっけ。

その間運動しなかったから太ったのだ。

(なんで高ちゃんはこんなでぶに親切なんだろう)

それでも、あたしは気を取り直して採血を受けた。ぶどうジュースみたいな血が注射器に吸い込まれていった。

「結果はいつ出ますか」

「肺がんの検査はちょっと時間がかかるので、水曜です」

あたしは六百円払うと外に出てバスを待った。予定より二十分遅れてバスは来た。・・・駅への道は渋滞してた。湿っぽい空気が充満してる。

クリニックにつくと、客は二、三人だった。順番はすぐに来た。

「木村さん」イケメンと言える先生があたしを呼んだ。

「はい」あたしは診察室に入った。

「最近の調子はどうですか」

「・・・週に二、三回就労支援所に出てます。あと、朝飯毎日と、支援所に行く日はできあいのものでお弁当を詰めてます。ヘルパーさんの来ない日は、あたしが父の夕食作ってます」

「頑張ってるね」先生はつぶやくように言った。

「それから」

「?」

「遅くなりましたけど」あたしは鞄をごそごそすると、ソフトカバーの単行本を差し出した。「うん」

「・・・これ、地方の詩人会の先生に言われました。痛々しい魅力があるけど、地に足がついてないって」

「君の過去だからね」先生は本をぱらぱらっとめくって言った。

「だから、今ちゃんと生きようとしてます」

「そうか」先生は診察簿に目を落として言った。「お薬はいつものままね」「はい」

あたしは深呼吸すると外に出た。・・・通りを歩く、どの幸せそうなカップルも全部全部、あたしとけいちゃんにだぶって見えた。

(けいちゃんが与えてくれたものは大きかった)

けいちゃんは。

短いたった二週間の間に、あたしに、あたしを大事にする人と付き合えって教えてくれた。

通りの途中の店で、あたしは足を止めた。大好きなアバンギャルド系の店で、スカートを五百円で投げ売りしてる。

「これください」

「あら、似合いますよ」店員はにっこりした。「前がわざと短い形ですから、スパッツと合わせても素敵です」

あたしはちょっと不思議な気分で、手提げ袋を抱えて思った。(スカートはくの久しぶりだ・・・)

(これ着て、高ちゃんのいる自助グループに戻ろう)

空気はほんの少し秋めいてきていた。

">
関連記事
もくじ  3kaku_s_L.png Morning Glory
もくじ  3kaku_s_L.png Black short short
もくじ  3kaku_s_L.png DOWN BEAT
もくじ  3kaku_s_L.png 刻印-sin-
もくじ  3kaku_s_L.png あとがき
もくじ  3kaku_s_L.png 現実の林檎
  ↑記事冒頭へ  
←秋の風    →5 被虐
*Edit TB(0) | CO(0)

~ Comment ~















管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


  ↑記事冒頭へ  
←秋の風    →5 被虐

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。