にがくてあまい午後

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にがくてあまい午後

日曜日

その土曜日のトークショウは楽しかった。

あたしは久しぶりに、電車に揺られて銀座へ出た。・・・三越の8Fが会場だった。

先生のトーク自体は結構退屈だったけど、終わった後例のようにお茶会があった。

「先生」あたしはめずらしく積極的に声をかけた。

「どうしたの」

「・・・正直、カルチャーの講座って退屈じゃないですか」

「うん」先生はあっさり言った。「皆、素人だからね。『何書いたらいいんですか』って逆に聞いてくる人もいるよ。だけど」

「?」

「私ね」涼坂先生は言った。「『ここに泉あり』って言う映画、知ってるかな。第二次大戦のあと、ちょうど今みたいに、皆が復興を目指していたころの話なの」

「はい」

「群馬交響楽団って言って」先生は続けた。「民間なのに、自分たちの興行成績だけでやっているオーケストラがあるの。・・・もちろん、最初は皆、聞いていないのよね音楽なんか」

「あら」

「でもね、その運動が広がって地方に音楽を愛する心がともってゆくの」

「そうですか・・・」

「エッセイだってさ」先生は続けた。「自分のこころを映すものでしょ」

「はい」

「そういう風に、ご老人でもサラリーマンでも、誰でも文章を通して自分を見つめるようになるのが私の夢」

帰りに、数人と名刺交換したあと、電車に揺られながらあたしは思った。

(涼坂先生、ロマンチストだなぁ)

その晩は、スーパーのお総菜を買って帰った。

次の日。

ヘルパーの佐藤さんが来た。・・・本当は日曜日はお休みなんだけど、あたしが無理して頼んだのだ。

「こんにちわ」

「佐藤さん、ひさしぶり」

「ここのところ忙しくって、代理の人が続いてごめんなさいね」

「あのね・・・」エプロンの紐を締めはじめた佐藤さんにあたしは言った。「あたし逃げてるかな?」

「敦美ちゃん、いつも一生懸命じゃないの」佐藤さんはちょっと驚いたように言った。

「そうじゃなくて」あたしは言った。「結婚とか、そういうことから」

「敦美ちゃんに結婚は今無理でしょう」

「・・・」

「すぐ疲れるし、ひとりになりたくなるでしょ?」佐藤さんは普通に言った。「はい」

「まず、お友達をつくるところから始めなきゃ」

(そうだなぁ)

「・・・敦美ちゃん、男の子と普通のお付き合いしたことある?」

「あんまりないです」

「まず、そこからね」佐藤さんは言った。「さて、今日は何を作ろうか」

・・・佐藤さんの作った、手羽先のカレーライスをパパとその日は食べた。カレーはつーんと辛かった。

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