にがくてあまい午後

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にがくてあまい午後

前日

月曜日は涼しかった。寒いくらいだった。

あたしは、いつものように朝食を食べた後、外に出て自転車を無理して出そうとしていると例の新城さんが、制服を着たまま会釈した。

「おはようございます」

「おはようございます」

「木村さん」新城さんは言った。「ちょっとお時間頂けますか」

「?」

「私、新しい短編の筋書き考えました」

「はぁ」

「三十の女性と四十五の男性が誕生日に一夜の恋に落ちます。・・・しかし、お互いに忘れられない恋人がいる。男性は、女性と別れた後昔の恋人に連絡をふと取ってみる。二人は再び結ばれる。そんな話です」

「・・・」(それ新城さんの願望でしょ)と内心あたしは思いながら返事した。「よくできてますね」

「そうですか」新城さんは胸を張った。「では掃除にもどります」

あたしは空を見つめながら駐輪場を掃除してる新城さんを後ろに、自転車を発進させた。近くのお気に入りの眼鏡屋にすぐついた。

「あのう」

「なんでしょう?」気さくな感じの店員さんが挨拶した。あたしは小さな声で言った。「老眼鏡欲しいんです」

「度を計りますよ。・・・新聞の字、ちょっと見てください」

「くっきり見えます」

「まだそんな進んでないですよ。市販のよりずっと弱くなりますけど、どうします?」

「作ります」あたしは思い切って返事した。明日は実は誕生日なのだ。・・・パパからお小遣いが入る。これくらいいいだろう。

「じゃ、フレーム選んで」

「これなんかどうですか?」あたしは黒っぽい縁に、きらきらしたビジューが入ってるのをかけた。

「まだお若いですし、もうちょっと遊びがあるものの方がお似合いです」店員さんは、真っ赤な縁に、白地にドットの入ってる柄がついたのを薦めてきた。

「じゃそれにします」

「次の木曜日に出来あがります」

あたしはちょっといい気分で外に出た。・・・新城さんの小説じゃないけど、ふと逃げてた高ちゃんに会ってみようかと思った。

(明日火曜日だ)

(自助グループの支部例会ある)

(・・・高ちゃん、支部来るとは限らないんだけど)

自転車を飛ばしてマンションに帰ってくると、あたしは意外とぐったりしていた。

(土日、頑張ったから疲れが出たんだ)

(佐藤さん来ると、ほっとして気がゆるむし)

(明日は支援所休もうかなぁ)

ぼんやりしていると、空が急に暗くなってきた。(雨・・・)

今まで、あたしは雨が嫌いだった。・・・一人だけ、夕飯の匂いや帰るところから取り残されてるような気がしたからだ。

でも。

本を出してから。

あたしには自信がついた。芹田や神木さんや、高ちゃんにしがみつかなくてもよくなった。あたしははっと気がついた。

(病院の中からけいちゃんもこの雨見てる)

あたしが本当に連絡取りたいのは誰なのか、自分でもわかっている。

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