にがくてあまい午後

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籠の鳥ーJAILBIRD-

第二十章


・・・調べてみたところ、ALAのミーティングは、クリニックに程近い教会で、月曜の夜7時から、開かれているらしい。

亜美は、ちょっと顔をしかめた。帰りが夜9時以降になる、暗い街並みにある教会への外出を、父親が認めるとは思えない。

亜美は決めた。

(いいわ。クリニックの処置室は、午後5時までは何とか粘れる筈だわ。・・・それから、喫茶店で時間を潰して、ALAに行ってみよう)

しかし、事は思ったように運ばなかった。

次の月曜日。いつものように、処置室で大人しく寝ていると、深津サンが午後3時きっちりに布団をはぎ取りに来た。

「ほらほら、亜美ちゃん、もうデイケアの時間は終わりよ。家に、お帰んなさい」

「私、あんまり頭が痛くて・・・あとちょっと、寝ていてはだめですか?」

「だめよ」

亜美は、祈るように言った。

「では、あと30分だけ・・・」

「仕方ないわねぇ」

深津サンは、処置室から出て行った。やれやれ。

ところが、30分後には今度は木崎がやって来た。

「亜美さん」

亜美は、聞こえないふりをした。

「亜美さん。・・・あなたが処置室でいつも寝ている事自体、そもそもクリニックの規則違反です。頭が痛いなら、タクシーでお帰りなさい」

「・・・はい」

しぶしぶ、亜美は起き上がった。木崎は、かなり怖い顔で睨んでいる。

(仕方ないわ。・・・あと、3時間半、どこかで時間を潰さなければ)

亜美は、わざとのろのろと支度をして、クリニックの門を出た。外はまだ明るい。

(どうしよう・・・)

亜美は、教会への一本道を歩き出した。時は、もう秋だった。街路樹の少し黄色く変色した、様子が目に染みた。

教会へは、すぐ着いてしまった。・・・まだ4時だ。

亜美は、きょろきょろと喫茶店を探した。ある。「CAFE NOIR」

中に入ると、喜ばしいことに客は2~3人だった。亜美は、クロックムッシュを注文すると、ゆっくりゆっくり歯で噛みしめて食べた。

まだ、4時半だ。

「コーヒー下さい」

亜美は、喫茶店で紅茶でなくコーヒーを飲むのは、これが初めてだった。間をおいて、濃い茶色の液体が運ばれてきた。・・・かなり苦い。

(仕方ないわ。・・・これは冒険なんだもの)

たっぷりと、ミルクと砂糖を入れると、それはゆっくり飲むのに適した飲み物であることが、亜美にも分かった。亜美は、横のマガジンラックからクラシック雑誌を取ると、記事を眺めながら、何とか1時間かけて、それを飲み干すことが出来た。

それから、30分、亜美は席で大人しくしていた。・・・すると、店員がうろうろと店じまいを始めた。

「あの・・・」

「お客さん、申し訳ありません。うちは、6時閉店なんですよ」

亜美は、900円払うと外に出た。もう、かなり辺りは暗い。教会は、目の前だった。・・・門をくぐると、懐かしい母方の祖母の匂いがする、と亜美は思った。亜美の母方の祖母は、カナダ人を母親に持つ人だった。・・・敬虔なクリスチャンでもあり、亜美の母親とは違って、厳しくはあったが、可愛がられた想い出がかすかに脳裏に残っている。

「ALA、午後7時から8時半、図書室」と脇の黒板には書いてある。

電気のスイッチをつけて図書室に入ると、まだ誰もいなかった。ただ、木彫りのマリア像が亜美を見守るように壁から視線を落としていた。
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