スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←第17章 →第16章
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



もくじ  3kaku_s_L.png Morning Glory
もくじ  3kaku_s_L.png Black short short
もくじ  3kaku_s_L.png DOWN BEAT
もくじ  3kaku_s_L.png 刻印-sin-
もくじ  3kaku_s_L.png あとがき
もくじ  3kaku_s_L.png 現実の林檎
もくじ  3kaku_s_L.png 短編いくつか
もくじ  3kaku_s_L.png その後の短編
【第17章】へ  【第16章】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

にがくてあまい午後

希望

 ←第17章 →第16章
次の日、あたしは就労支援所に行ったけど、もう頭痛と目がかすむのと両方で椅子でぐったりしてた。

元木さんは言った。「今日はもういいから。少し運動する習慣をつけなさい」

運動かぁ。

何だか前向きな忠告が頭に入ってこない日ってある。

あたしはその晩、めったに電話しないきっこに電話してた。きっこは、病気になる前からの幼なじみだ。

「きっこ、あたし疲れた」

「あたしも疲れたよ」ぼそっときっこは言った。「スーパーのパート帰って、これから子供の塾帰り迎えに行くの」

「そっか」

「敦美は苦労足りないよ、って昔よく言ったけど」

「へへ」

「今はよくやってんじゃん?」

「そうでもない」あたしは小さな声で言った。「そうなの?」「うん」

「何に疲れてるの」

「・・・パパ」

「あたしも旦那に疲れることあるけどさ」きっこは言った。「人間関係って、これしたらこれやって、っていう風にギブアンドテイクにしないとだめだよ。男って、どんどん増長するからさ。じゃね」

電話を切ってあたしは思った。・・・きっこの言うとおりだ。

次の朝、あたしはめずらしくパパに起こされた。「おい」

「何・・・」

「今日、行っていいかい」

「だめ」

「・・・」

「遺言状書くまで、ここ来てほしくない」

「わかった」

電話は切れた。

これは卑怯なのかも知れない。

だけど、あたしが稼げない以上、結婚も今普通に無理な以上仕方ない。

元木さんの言葉が耳にふとこだました。「働いてる人って、ほんと必要に迫られてるのよ。『寝る時間があるのがありがたい』ってみな言うわよ」

それはその通りにちがいない。

でもあたしは書きたい。これはあたしのわがままだ。書いて書いて本を出したい。・・・昨日届いた童話の採用通知を見て、いっそうあたしはそう思った。書いて疲れて寝る時間がなくなるのはいい。だけど、普通の人にできることがたぶん、あたしにはできないしたくないのだ。

だけどパパがどうでるかはわからない。

たまった洗濯物をがーっと回すと、あたしはベランダに出た。いつものように新城さんが草むしりをしてる。

「新城さぁん」

「はい?」

「あたし、お見合いすることにしました」あたしは近所に聞こえるような大声で言った。

「は?」

「お金くれるお年寄りと結婚するんです」

「木村さん、私仕事中です」

「お金です世の中は」

「それはそうです」

「もっともっとお金あれば、新城さんどうしますか?」

「私仕事中で」

「仕事しなくってもいいんです」

「敦美さん」新城さんはめずらしく名前で呼んだ。「結婚と言うのは夫婦生活をすることです」

ぎゃふん。

「例えば、私とそれができますか?」

は?

「いえ」新城さんは言った。「つまらないことを言いました。では」

・・・確かに。

八十過ぎのおじいさんと、財産前提で夜の生活するのは大変だ。新城さんはいいことを言ってくれたのだ。

あたしが、その晩童話のラフと格闘してると電話が鳴った。「パパ」「敦美」「どうしたの?」

「今日、銀行行って相続の相談してきたぞ」

「そう・・・」

「むつかしいけどな」パパは言った。「一か月くらいはかかるかも知らん」

「わかった」あたしは素直に言った。「今日来て」

「いいのかい」

「いいよ」

あたしは電話を切って思った。

希望は言わないと伝わらない。

">
関連記事



もくじ  3kaku_s_L.png Morning Glory
もくじ  3kaku_s_L.png Black short short
もくじ  3kaku_s_L.png DOWN BEAT
もくじ  3kaku_s_L.png 刻印-sin-
もくじ  3kaku_s_L.png あとがき
もくじ  3kaku_s_L.png 現実の林檎
もくじ  3kaku_s_L.png 短編いくつか
もくじ  3kaku_s_L.png その後の短編
【第17章】へ  【第16章】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 現在非公開コメン卜投稿不可です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【第17章】へ
  • 【第16章】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。