にがくてあまい午後

スポンサー広告

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
もくじ  3kaku_s_L.png Morning Glory
もくじ  3kaku_s_L.png Black short short
もくじ  3kaku_s_L.png DOWN BEAT
もくじ  3kaku_s_L.png 刻印-sin-
もくじ  3kaku_s_L.png あとがき
もくじ  3kaku_s_L.png 現実の林檎
  ↑記事冒頭へ  
←第23章    →第22章
*Edit TB(-) | CO(-) 

にがくてあまい午後

別れ

次の日、またいつものように佐藤さんが来た。あたしは童話のラフが思ったように進まないのでいらついていた。

「どうしたの、敦美ちゃんへばってるじゃない」

「うん」

「何かあったの?お薬よぶんに飲んだら」

げ。

それだけはいやだ。

「あのね、佐藤さん」

「?」

「抗鬱剤の正体って、覚せい剤と同じ物質なんだよ」

「でもねぇ」佐藤さんはエプロンを巻きながら言った。「敦美ちゃんは病気なんだから」

なにそれ。

「・・・鬱だったら、覚せい剤飲んでも元気でいた方がいいの?」

「だって、仕方ないじゃない」

「なにが?」

「結局ね、たくさんの人と寝たり自殺したりする人はみんな病気なのよ」

「佐藤さん・・・」

「敦美ちゃん、いっぱいわるいことしたでしょう?」

あたしは癇癪を起し始めていた。「だから何なの。佐藤さんはわるいこと何もしてないの」

「してないわよ」佐藤さんは平然と言った。「あたし、知ってるんだから」佐藤さんは、洗い場にうずたかく積まれた食器の山を洗う手を止めた。

「佐藤さんの弟さん、自殺しちゃったんでしょ」

「それがどうかしたの」

「弟さん、病気なんだぁ」

「そうよ」佐藤さんは普通に続けた。「あの子病気よ。・・・大体、あたしたちが手伝いに行ってるのに、ひがんだり自殺したりする人はみんな病気なの」

「・・・」

「ご飯よそってくれる?」

「今日はもう帰ってください」あたしははっきりした発音で言った。「あたし後自分でできますから」

「そう」佐藤さんはエプロンを外した。「じゃ、また」

閉まったドアに、あたしはものをぶつけたくなったけど我慢した。わかってはいた。

佐藤さんは『まとも』な人なのだ。

まともな人たちは、あたしたちとの間に一線を引く。・・・そして「助けてあげてる」と思ってほっとする。

あたしは疲れてる。

そういう人たちに・・・。

たぶん。

だけどふっと気づいたのは。

佐藤さんの弟さんは、それが寿命だったのだ。・・・誰がわるい訳でもない。

佐藤さんは、本当の意味で傷ついたり、笑われたりしたことがないんだろう。つまり孤独感ってものがわからないんだろう。

だけど、弟さんは。

あたしはかぶりを振った。・・・悪くない人でもまともな人でも、付き合えなくなる瞬間はあるのだ。

その晩あたしは事務所に電話をかけた。「あの」

「K’sヘルパーセンターです」

「木村です。・・・夜分すみません。ケアマネ、申し訳ないんですけど他の方に変えてください」

「それは」

「・・・」

「事情を詳しく聞かせてください」

「言えません」あたしは言った。「ただ、前にも言ったけどこれ以上踏み込まれたくないんです。それだけです」

「わかりました」交換の人は慌てて言った。「前向きに対処します。では」

あたしはそして気づいた。

(佐藤さん、あたしが本出したのが気に食わなかったんだ)

どんなにまともな人でも、距離のとれない人間関係はだめになる。

">
関連記事
もくじ  3kaku_s_L.png Morning Glory
もくじ  3kaku_s_L.png Black short short
もくじ  3kaku_s_L.png DOWN BEAT
もくじ  3kaku_s_L.png 刻印-sin-
もくじ  3kaku_s_L.png あとがき
もくじ  3kaku_s_L.png 現実の林檎
  ↑記事冒頭へ  
←第23章    →第22章
*Edit TB(0) | CO(0)

~ Comment ~















管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


  ↑記事冒頭へ  
←第23章    →第22章

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。