にがくてあまい午後

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籠の鳥ーJAILBIRD-

第二十一章


やがて、人が1人2人と入って来た。

どこか、やはり昔通った教会の日曜学校を思い出させる人ばかりだ。・・・リーダーらしき人が、机の上に、見慣れない本を1冊1冊並べてゆく。

7時きっちりに、亜美を含めて4人で「分かち合い」が始まった。

・・・亜美は、正直言って頭が痛すぎて、誰が何を言っているのか、ほとんど聞き取れなかった。ただ、皆がアル中の家族を持って苦労しているらしい事だけは分かった。

ふと、亜美の頭をよぎった事があった。

そう、あの母親がキッチンドリンカーになりかけた事があったのだ。

理由は、例によって忘れた。・・・確か、激怒した父親が、母親ではなく亜美を叱りつけたこと、台所のみりんに全部塩を入れてしまったこと、やがて母親が薬らしきものを処方されて、酒をやめたことだけをぼんやりと覚えている。

・・・亜美が、何を言おうかと、躊躇っていたとき、見覚えのある顔が、遅刻して部屋に入って来た。

東さんだ。

亜美は、びくっとすると同時に、自分はこれを待っていたのだと思った。

東さんは、席に着くと、よどみなく喋り始めた。しかし、亜美にはそのよどみなさにどこか嘘があるような気が、頭痛の片端で、した。

「分かち合い」は、終わった。亜美は、ついに喋らずじまいだった。

「では、献金の時間です」

亜美は、慌てて財布を探った。・・・一体、いくら入れればいいのだろうか・・・?

迷った末、亜美は持っている小銭を全部献金袋に入れた。

会計係らしき人が、袋を開ける。・・・驚いたことに、中には千円札も入っていた。

「さあ、片づけをしましょうね」

リーダーらしき人に言われて、亜美はおぼつかない手つきで、本類を箱に入れたり、ドアにかかっている「ALA」の掛札をとったりした。東さんは、いつものように隅で何もせずに凍りついたような微笑だけを浮かべていた。

帰る、時間だ。

もう、教会の外は暗い。リーダーらしき人と、あとの2人から差し出される手をとって、亜美はぎこちない握手をした。

(TAXYを呼ばなければ・・・。ここから、歩いて帰るのはちょっと無理だわ)

残された亜美が、一人で考えていると、どこからともなく東さんが近づいてきた。

(この人と帰るの・・・?一人きりよりは安心だけれど)

しかし、東さんは、亜美の正面に回って唐突に、思いつめたように言った。

「嵯峨さん」

「はい」

「私、木崎さんはあなたに渡しません」

「え・・・?」

「私は、木崎さんと結婚の約束をしています」

「・・・」

亜美が、絶句していると、東さんはそれだけ言い捨てて、暗い道を消えて行った。

(結婚・・・?結婚・・・?何のこと?)

考えれば、考えるほど頭痛がして、もう止まらない。

亜美は、少し歩いて、大通りでTAXYを拾って家に帰った。時刻は、9時を過ぎていた。
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