にがくてあまい午後

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にがくてあまい午後

電車

次の火曜日、あたしは支援所をお休みして電車に揺られていた。

外にはもう紅葉しはじめた木々が見えた。・・・何だか、ひさしぶりに外へ出た気がした。

新宿につくと、大きなビルの10Fへエレベーターを昇った。おとといの衣良さんの声が耳にこだました。

「あたしもお見合いで結婚したの。・・・でも、だいたい4人目くらいで決めちゃったよ」

小奇麗な、ガラス張りの外をうろうろしてると声がかかった。

「いらっしゃいませ」

中のブースに座ると飲み物が出てきた。50そこそこのきびきびした感じのおばさんが出てきた。

「あのう・・・」

「わかってます。ここは出会い系とは違いますから」

「はい」

「あなたが」おばさんはあたしの目の中をのぞきこんだ。「一番、いままでの生涯で嬉しかったことは何ですか?」

「二年半前、実家を離れて自立できたことです」あたしは正直に答えた。「そう」

「それを、嬉しいと思ってくれた人と縁が出来るでしょうね」

「・・・」

「もちろん、それが何?って言う人もいます」

「はい」あたしは小さな声で答えた。

「では、これからいくつかの質問に答えてください」

あたしは、おばさんの指示通りにパソコンに向かって質問に答えた。料理は好きですか。どんなインテリアが好きですか。家庭内のことは男と女、どちらが決めるべきだと思いますか。etc。

全部答えると、ささっと書類がプリントアウトされてきた。

「あなたは、個性的でずっとひとりのひととべったりしてると疲れるみたいね」

「その通りです」

「あとは、条件ね」

「・・・」

背が高い方がいいか。太ってるのはいやか。眼鏡は好きか。お酒はどこまで許せるか。そして収入。

「写真を撮りたいですが、これはできたら仮のものにして、指定したスタジオで撮ると効果的です。暗い人も、明るいイメージになります」

「はい・・・」

「あとはいくつか書類を片付けてください」

ややこしい手続きを済ませると、もう12時を過ぎていた。外に出ると、人ごみが今までより自分に近しい気分がした。

いままであたしは。

どこへ行っても、何してても自分と人ごみとの間に薄い膜があって、人と隔てられてる気がしてた。

その膜がふっと薄くなった気がした。

(料理、好きとか答えちゃったけど・・・)

(主菜は冷凍あっためてるだけだから、あれはちょっと詐欺かなぁ)

(いい人みつかりますように)

あたしは祈るように新宿の空を見上げた。空は何事もなく青かった。

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