にがくてあまい午後

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にがくてあまい午後

苦手

次の日も、その次の日もあたしは昼過ぎまでぐでんぐでんに寝てた。・・・一気に疲れが出たのだろう。

月曜日に、佐藤さんが来た。最初はいつも通りだった。

「どうしてたの?」

「軽井沢行ったりしてました」あたしは半分眠い頭で答えた。「へえ、温泉とかつかった?」「いえ、文学散歩だったので」

佐藤さんの体がどことなく硬直するのがわかった。「それもいいじゃない?」

「ええ」あたしは答えた。「詩の朗読とかしたら、見直してくれる人がいたみたいでよかったです」

「そう」佐藤さんは言った。「詩の仲間の人って、どっか違うのね」

(それどういう意味?)と思いながらあたしは返事した。「はい、楽しかったです」

「・・・敦美ちゃんの小説、面白かったわよ」佐藤さんは腕をまくしあげながら言った。「私、昔公民館で小さいころ楽しかったときのことを絵本にしたの。でも、やっぱり、書く人の書く小説って違うんだなぁと思った」

佐藤さんが帰ったあと、あたしは何だかむっつりしてた。「どうした、敦美」パパが心配して聞いた。「なんだか不愉快」

「そうか」

「なんか元気でない」あたしは繰り返した。「佐藤さん来ると、あとで実は落ち込むの」

「・・・」

「他の人は」あたしは続けた。「小説面白かった、って言えば、本当に面白かったか興味なかったかのどっちかだかわかるの。でも佐藤さんは」

「・・・」

「あたしの小説気に入らないのよ」

「それは嫉妬かも知らん」パパは言った。「嫉妬?」あたしは驚いた。「いい人でも、そういう感情はある」

「・・・」今度はあたしが黙った。

「わからないんだよ、佐藤さんに小説のことは」それっきり、パパも黙った。あたしは、ふと最初に入れられた精神病院のことを思い出していた。

(ここに来る子って、みんな病気だから)

(そのなかでも敦美ちゃんは一番病気)

佐藤さんの目は、あの看護婦さんたちに似てるのだ。「まぁあんまり落ち込むな」パパはいつも通りのんきに言うと、お皿を洗い始めた。あたしはこたつに猫みたいにくるまって小さくなっていた。

(佐藤さんは)

(あたしの)

(向こう側にいる人なんだ)

苦手だなぁ。

佐藤さんはたぶん、感情を押し殺してここに来てたのだ。でも、やっぱり気持ちはあるのだ。「病気の子は可哀相でなくっちゃいけない」っていう気持ちが。

なんだか。

いやだ。

それは差別よりもっといやだ。

佐藤さんの作ったトマトの味噌汁と白菜と豚のバラ肉の煮物はまずかった。

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