にがくてあまい午後

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にがくてあまい午後

意志

その晩もパパは来た。

「これ、シュークリームと谷川俊太郎の詩集だぞ」

「うん」

「元気ないな、敦美」

「・・・これからたらこスパ作る」

あたしは何とか体を動かして、たらこに茹でたスパゲッティをからめて、海苔を刻んだ。食卓に着いたパパは言った。「シソが刻んであって、バターが利いてるともっと旨い」

シソなんかないよ。

それからパパはなんだかいつもの話題を繰り返した。「猫は可愛いなぁ」「そう?」「うん」

「ひよこは可愛くない」パパははっきり言った。「そうかな?」

「ものとしては可愛いんだ。ふわふわしててぴよよって鳴いてな。・・・だけど、表情と言うものがない」

「・・・」

「それで」パパは続けた。「にわとりになっちゃうと、もう全然可愛くすらないんだ。時々コケコッコーっていきなり鳴いてこっちはびっくりする」

「そお」

パパはそれからいろいろしゃべってた。カラオケスナックのあのおじさんは、いつまで親に可愛がられなかった、って言ってるんだろう、とか。

「だけど、その人財産残してもらえなかったんでしょう?」

「いや、その前からずっとそういってるんだ」

「・・・可愛がられなくて、お金も残してもらえなかったら、それはひがむよ」

パパはむっとしたように言った。「パパなんか、小学生の頃から親離れしてる」

パパが帰って、あたしはドアをぱたんと閉めて思った。

猫はママと弟のことだ。

ひよこで、今にわとりなのは無表情なあたしのことだ。

・・・カラオケスナックのおじさんも、もちろんあたしのことを遠まわしに言ってるのだ。

あたしがいくら、行動でパパのために頑張っても。

実際にパパが好きなのは、うまくパパにこびるママと弟だ。・・・何にもしなくっても、あの二人はパパに愛されてる。

たぶん。

尽くすからいけないんだ。

あたしがご飯をだまって作るから、パパはそれが当たり前だと思ってる。

TVをつけると、ふと児童保護施設の子供たちをレポートしてるニュースにぶつかった。みんな、うつろな目をして言ってた。

「親なんか恨んでないよ」

「ここにいるの仕方ないよ」

「誰も関係ないよ」

あたしは嗚咽しかかってTVを消した。

あれはあたしだ。

誰かに本当は、かまって欲しくて仕方ないあたしだ。・・・だけど、あたしは大昔にもう、どっかでそれをあきらめていたのだ。

誰も、お兄ちゃんからあたしのことを守ってくれなかった。

次の朝、あたしは電話でパパに言った。「あのね」「ん?」

「ママと弟に、ご飯作ってもらいたかったらそうして」

「・・・」

「あたし、当たり前にパパの世話するの疲れた」

「パパは別に、ママや弟と暮らしたいと思ってないよ」パパは猫なで声で言った。

「そうかなぁ」

「そうだよ」パパは、目が覚めて来たのか怒鳴った。「しばらく来ないで」あたしは電話をがちゃんと切った。

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