にがくてあまい午後

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にがくてあまい午後

世間

次の日。

あたしはどうにも一人がいたたまれなくなって、久しぶりに支援所に出た。皆、忙しそうに針仕事や料理をしてる。

少し、パッチワークの続きをしたら気分が落ち着いてきた。チーフがにこやかだ。

お昼ご飯が終わったところで、あたしは言った。「ちょっと面談お願いします」

「いいわよ」あたしたちは相談室に入った。

「悩みのかたまりみたいな敦美ちゃん、どうしたの?」

「いえ」

「でも最近落ち着いてると思ったけど」あたしは論点をちょっとそらして言った。「実はお見合い相談所のことですが」

「そう・・・。だいじょうぶ?お金かかるでしょう」

「はい」

「うちでも」チーフは続けた。「大金、だまし取られたって言ってる子いるわよ」

うち、とはこの際支援所のことだ。

「自分から動かないと、話まとまらないそうです。ただ言うとおりに待ってても」

「なるほどねぇ」チーフはため息をついた。「信用できる出会い系と同じだから、って言われました。個人情報は守るけど、昔のお見合いと違うからって」

「ふむ」チーフは言った。「敦美ちゃん」

「はい?」

「この際、事実婚の方がいいと思うわよ」

「・・・」

「結婚して」チーフは続けた。「籍入れちゃうと身動きがとれないでしょう」

「はい」

「お互いに期待して、不幸になってる夫婦っていっぱいいるから」

あたしは言った。「できたら、一年くらい通い婚・・・てゆうかお付き合いして、あたしのことよくわかってくれる人がいいです」

「別居婚もありだもんね」チーフは感心したように言った。「今はなんでもあり」

相談室を出て、売店で六十円の売れ残りの紅茶サブレを買って、それをかじりながらあたしは帰路についた。

(いろいろなんでも変わっていく)

(でも変わらないものもある)

マンションに帰ると、童話の絵にとりかかったけど、なかなか筆はすすまなかった。・・・それでも、何とか編集の言うように絵に表情を出して、前の案と第二案をコピーしに、コンビニに出かけた。

コピーは二十分くらいかかってしまった。

帰り際に、特売品が目に入った。「アーモンド食塩非添加、五十袋九百五十円」

やばい。

アーモンド大好きなんだ。

(絶対太る)と思いながら、ふらふらとその大箱を買った。・・・マンションにつくと、絵を新しくしながら四袋もたいらげてしまった。小袋ではあったけれども、お腹がぱんぱんになった。

(お薬飲まなきゃ)

胃薬と、時間通りにいつもの安定剤を飲もうとしたら、安定剤が一個洗面台の中に転げ落ちてなくなってしまった。(ありゃ)

仕方なく、あたしはクリニックに電話してた。「先生」

「はい」

「お薬落としちゃいました。予定変更で明日伺います」

「いいですよ」

「それから」あたしは続けた。「結局、父と夕飯食べてます」

「・・・」

「誰もいないと食欲わかないんです」

これは半分うそだ。

「いいでしょう」先生はため息をついた。「薬は明日出します」

電話を切ってあたしは思った。

不思議なことに、世間って、父親が娘のとこに来るのに反対はできないみたいだ。

パパで、結婚の練習になるのかって気はするけど。

「おい敦美、ケーキ買ってきたぞ」

その晩はれんこんのはさみ揚げだった。

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