にがくてあまい午後

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にがくてあまい午後

あたしは、熱を出した。

ずっと、小説サークルの文化祭の準備にかかりきりだった週末に、ふっと気が抜けるようにそれは来た。

(頭痛いなぁ)

(からだの節々も痛い・・・)

オムロンの体温計で、脇の下を計ったら微熱があった。(どうしよ)

咳がこんこん出始めた。

あたしは、吸入器をうっかり先に吸ってから、朝の薬を飲んだ。急に吐き気が来て、薬は洗面台に吐いてしまった。気を取り直してもう一度飲んだけど、やっぱり吐いた。

(もうあと二錠しか薬ない)

(どっちみち、これじゃ内科とクリニックに行かなきゃだめだ)

あたしはふらふらしながら三度目の薬を注意深く飲んだ。(パパ)

(電話しよう)

「パパ」

「敦美、どした」パパは眠そうに言った。「薬吐いちゃった」「そうか、タクシーでクリニック行きなさい」

「・・・」

「どうした」

「一緒に来てほしいの」

「細川先生、あんまり父兄同伴好きじゃないだろう?」

「心細いんだよぉ」あたしはめずらしく泣き声を出した。「変だぞ敦美。熱あるのか?」

「うん」

「仕方ないなぁ」パパは言った。「ちょっと着替えてそっち向かうから待ってろ」

電話は切れた。

あたしは何だか自分が別人になったような気がした。朝食も全然食欲がわかない。

(どうしちゃったんだろ)

とにかく呼吸が苦しいのだ。

しばらくして、ドアを開けたパパはあたしのふらついて咳込んでいる様子を見て言った。「敦美そりゃ発作だ」

「発作?」

「喘息の発作起こしてるんだよ。・・・苦しいはずだ」

パパも喘息持ちなのだ。

「パパぁ」

「泣かない泣かない」パパは言った。「仕方ないから内科へとにかくまず行こう。そのうち、都内の大学病院で呼吸器専門のとこへ行った方がいいんだが」

「そうなの?」

「・・・喘息って決まっちゃうと、山のように薬出るから今は我慢だ」

あたしとパパはふたりしてちょっとぜいぜい言いながら、タクシーを呼んだ。内科は空いていた。

「お薬、二千八百円です」

(確かに沢山出たなぁ)

それから、薬局から今度はクリニックに向かった。こちらは結構混んでいた。がたがたしながら順番を待っているとすぐ十一時半になった。

「すみません。・・・あと一錠しか朝の安定剤ありません」

「昼間と夜の抗鬱剤は?」先生は相変わらず冷静な調子で言った。「それは六日分残ってます」

「じゃ」先生は言った。「朝の分七日分、昼夜の分二日分ね」

クリニックが終わって、ほっとしたパパとあたしは近くの大戸屋に向かったけど、もう二人とも食欲がなかった。パパは小さなまぐろの漬け丼を、あたしは抹茶のパフェを少しずつ食べた。

マンションに帰ると、あたしはぐったりしてた。「過労だよ」パパは言った。

(確かに)

(自立自立って、周囲に言われて頑張りすぎたんだ)

パパはあたしの気持ちを見透かすように言った。「周りの人、いろいろ言うだろう?」

「うん」

「だけど、責任はとらないからな他人は」

「・・・」

確かに。

頑張れっていうのはただだ。・・・それで応援してる人が倒れても観客は別に損はしない。

パパは言った。「自分のペースで生きなさい」

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