にがくてあまい午後

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にがくてあまい午後

事情

水曜日、あたしは再び童話の打ち合わせに出かけてた。

「ここね、詩としてはいいんだけど、子どもに伝わりにくいの。意味が」

「暗喩じゃだめってことですか・・・」

「そうだね」

昨日、檜山さんには事情は電話で説明した。返ってきたメールはこうだった。

「頑張れ木村さん」

檜山さんは存外もののわかった人なのかも知れない。夜、くたびれた足をひきずって、近所のフレンチに到着した。お客は皆、ドレスアップしていて、個性的なネイビーのワンピースで自分的には決めたつもりだったけど、ちょっと気後れした。

でも、途中で席を立って洗面所に行ったら、あたしはそんなに見苦しくなかった。

檜山さんも同じ気持ちみたいだった。

「木村さん」

「はい?」

「格好いいじゃない、個性的だよ。作家さんって感じがする」

「まだ、作家さんじゃ」

「いずれ、本、値打ちが出るかも知れないよ」

「・・・」

「そういえばね」

「はい?」

「紹介書に、『無職』って書くのやめた方がいい。本当は、仲人さんが言うべきことなんだけどさ。『アルバイト』にでも今から変えた方がいいよ」

「はい」

「木村さん、二十人以上も紹介状来てるのにアタック少ないでしょう?」

「ええ」

「きっと、そのせいもあるよ」檜山さんは、フレンチを食べ終わって煙草をふかしながら言った。「僕は木村さんの味方だから」

「ありがとうございます」

「いいんだよ、はは」檜山さんは笑った。「おとなしいね」「それほどでも・・・」「そう?」

「ふとってるし」

「ミロのヴィーナスって知ってるかな」

「はい」

「あれね、近くでちゃんとみると結構、腰回り太いし巨乳じゃないの。だけど健康的で、ギリシャの美を感じさせるよ」

「AKB48みたいじゃないんですか」

「全然違う」檜山さんはまた笑った。「ああいう女の子が出てくるのは社会が病んでる現象だと僕は思ってる」

「病んでる・・・」

「そう、今みんな病んでるよ」

それきりあたしと檜山さんは黙ってシャンパンを飲み干した。「送って行こうか?」

「いえ・・・」

「はは、敦美ちゃんは固いな」

「固いですか」

「そこがいい」檜山さんは勘定を払いながら言った。「次の店行く?」

「すみません、もうかなり酔ってて」

「お酒弱いんだなぁ・・・」

「飲みつけてないので」

「いいよ」檜山さんは、一緒に駅まで歩いてタクシーを拾ってくれた。「ほい」

「また」

「今度またね。クリスマスまでにまた連絡するよ」

あたしは、なんか檜山さんにわるいことしてるような気がした。タクシーは夜の道をすうっと走って檜山さんを闇の中に取り残して行った。

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