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にがくてあまい午後

氷雨

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だけど。

月曜日、思い切って出かけた(そして期待していた)こころの健康センターは何だか暗いところだった。・・・大幅な節電で、廊下が真っ暗なせいもあったかも知れない。

相談室で待っていると、びくびくしたような感じの小柄な女性が出てきて挨拶した。

「桐田です」

「よろしくお願いします」

「・・・他に、相談に乗れるところなかったの?」いきなりそう言われた。「あることはあります」

「そう」

「ただ・・・」あたしはちょっとためらって続けた。「心境をきちんと整理したいんです」

「今、どこも暇なとこなくて」その女性は言った。「主治医の先生のところは?」

病気となると、皆この逃げ口上を使う。

あたしははっきり言った。「先生は、お薬の出し方については信頼してます。・・・でも、病気の人間にとって主治医が神様じゃないし魔法使いでもないです」

「・・・」

「あたし、年が明けたら『アトリエ零』に行ってみようかと思って。障害者に、就労じゃなくて自主製作させるところです」

「困ったわねぇ」桐田さんは言った。「そのために、車の免許欲しいんです」

「免許!?」

「はい」

「車ってね、月五万円は維持費かかるわよ」急に熱を入れて桐田さんは言った。「事故ると大変でしょ?タクシーになさい」

「・・・」今度はあたしが黙った。

「今、確かなものなんて何もないから。あたしも貯金してるから。・・・あなたが、本当に困ってくれば生活保護とか支援できるけど」

それを避けたいんじゃん。

「とにかく、自分の不安定な部分を何とかしたいんです」

「深呼吸するとか、お父さんと一緒にいるとか。今日は、疲れてるみたいだからこれで終わりにしましょう」

あたしは、息を吸って外に出た。霰が降り始めていた。

(あたしの側にいる人たちは)

(無責任かも知れないけど、みんな親切なんだ)

最寄りの駅に着くと、小さな駅ビルがあった。竜田揚げとレタスのサンドとカフェオレを頼んだ。パン屋にいる人は、みんな小さく背を丸めていた。

(しょうがない)

(周りの人を大事にして、それに振り回されないようにするしかない)

帰りにふと見ると、小さな手作りのマシュマロ屋さんがあった。切れ端ばかり入った袋を二百円で買った。

(あたしはまだ恵まれているのかも知れない)

桐田さんの小さな姿が目に浮かんだ。・・・でも、桐田さんは自分で稼いだお金で、服を着て車を持っている分、あたしより何かを確かに所有している人なのだ。

(あたしが持ってるもの)

(自分で出した本の在庫だけ)

駅のホームは寒かった。・・・霰のせいもあるけど、とてもとても寒かった。

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