にがくてあまい午後

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にがくてあまい午後

詐欺

その夕の選挙の開票速報は、自民党の圧勝だった。

あたしは、オフコースの「さよなら」を聞きながら、醤油ラーメンをつくった。ゆで卵を半分に切って、焼き豚とねぎと小松菜をのせた。

パパは、ニュースを見ながらぽつんと言った。

「きつい時代が来そうだな」

「そうだね」

「敦美、童話の出版うまくいってるのか?」

「うん」

「どこだって言ってたっけ?出版社」

パパはこういうところのんきだ。「世界文学館」あたしは答えた。「そこの本あるかい」「うん」「ちょっと見せなさい」

あたしは、友達がそこで賞をとって出した本を見せた。パパはうなった。「どうしたの?」

「感心しない」パパはぼそっと言った。「なんで?」

「装丁がひどすぎる。それに紙の質が非常に悪い」

「そうなの?」あたしは心配になって聞いた。「敦美わからんか」「わかんない」パパはため息をついた。

「これは詐欺に近いよ」パパは言った。「無料出版だろうから、経済的に直接損はしてないんだろうが・・・」

があん。

「そうなの?」

「どっか、な」パパは本を閉じて言った。「地方で信用おけるところ探してみなさい。・・・出版業ってやくざに近い部分があるんだ」

やくざ。

要するに、地回りの方がまだ安心、ってことかぁ。

「なんか探す」あたしは必死に言った。「小説サークルで、垣沼さんが前お世話になったとこあったはずだから」

「そうしなさい」パパはお食後の栗原はるみのパンナコッタを片付けながら言った。

次の日。

あたしは、調べてみたら家のすぐ近くだった「関東文庫」の前に立っていた。

(ぼろいな)

(世界文学館に比べると・・・)

コンクリートのむき出しの、灰色の階段を昇ると、意外に感じのいい老婦人が、受付にいた。「いらっしゃい。木村さんね?」「はい」

「今日の朝のNHK見た?」

「いえ」

「被災地の子どもに、積み木に童話を書いたものを送っているの。感動したわ」

「そうですか・・・」感じがいいな、と改めて思いながら、あたしはお茶を前にして編集の人を待った。

「こんにちわ」

「こんにちわ・・・」

「新芸社さんから本を出されたそうで」編集の、髪のまっ白い銀縁眼鏡のおじさんは言った。「はい。でも、その前に小説サークルで知り合いがお世話になりました」

「もしかしてあの・・・」編集のおじさんは言った。「穏やかな・・・ええと」

「垣沼さんです」

「そうですそうです」

「これ、あたしの本ですが・・・」「ああ、これね、百万はかかったでしょう」

「はい。なんかイケメンの若い人が出てきてやたらと褒めて」

「これね」編集の人はちょっと言葉を濁した。「なんですか?」「普通、五十万でできる本です」

今なんておっしゃいました?

「五十万!?」

「いいにくいけど、そうです」

あたしはやっとだんだん事情を了解しつつあった。

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