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にがくてあまい午後

年納め

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お正月が近づいていた。

あたしは、昼近く起きてほとんどひきこもったままの生活を続けていた。夕方には必ずパパが来た。それでも、鬱っぽい感じはしなかった。

思えば。

あたしは檜山さんの一件で結構傷ついていたのかも知れない。

そんなときあたしは、繭玉のようになって回復を待つ。・・・そうすると、だんだん気持ちが澄んできて、自分の何がわるかったか何がよかったか分かるようになってくる。

実際。

忘れかけていた芹田のことも、今はそんなに悪い奴だとは思えなかった。・・・芹田は別に、あたしとやりたくない訳じゃなかったのだろう。あたしがあんまりガードが固くって、おまけにぼんやりしているから、自分を否定されたような気がして傷ついたのだろう。

だけども、それはそれだけの縁だったと言うことでもある。

ある夜。

また、コンタクトパークから、メールが届いていた。

「白須嗣朗と言います。お付き合いお願いします」

ぶっきらぼうな感じの文面に、あたしは好感を持った。メルアドにとりあえずメールをしてみることにした。

「こんばんは。木村です」

「こんばんは」すぐにメールは返ってきた。ややこしい挨拶の後わかったのは、白須さんはフリーランスのSEをしていると言うことだった。「木村さん、スカイプ使えますか」「使えます」

「じゃ、そっちで話しましょう」

白須さんは、どこか懐かしい匂いのする人だった。

「餓えてますよ、僕」そんなことを白須さんは平気で言った。「お腹空いてるんですか?」

「色んなことにね。食事も仕事にも」

「今、不況ですもんね」

「ネットバブルの頃とは違います。あと、三ヶ月たったら、大きな案件が入るんですけれども、それまでは小さな不安定なのがちらほらあるだけです」

「ちなみに、聞いてもいいですか?」

「ああ、バツイチです、僕」

「・・・勘がいいですね」

「それで仕事やってますからね。見ない方がいいものにも沢山かかわったし」

「東京の方ですか?」

「いや、よく勘違いされるけど鹿児島です」

「それは・・・」

「遠いですね」白須さんはぼそっと言った。「神戸まで出てこれませんか?」

「は?」

「スカイマークで一時間です」

「あたし、飛行機乗ったことなくって」

「何事も経験ですよ」やくざっぽい口調で白須さんは言った。「・・・」「いやなら無理に誘いません」

「また、後でお返事させてください」あたしはスカイプを切った。

真っ暗になったPCの画面を背に、あたしはメガクランチポテトを揚げながら頭を整理した。

(フリーランスのSE)

(睡眠障害気味)

(たぶん、かなり危ない橋も渡って来た人・・・)

格好はいい白須さんではある。

だけど、その晩ベッドに潜ってあたしは何となく落ち着かなかった。秩父さんのセリフが耳にこだました。

「体で考えないと濁ります」

確かに。

秩父さんや志岐さんと話した後のような爽快感が体になかった。・・・もっとなにかあさましいものがあった。(一人でいるのはつらい)

(でも)

(神戸に行っても、また三日経ったら取り残されるだけだろう)

白須さんはおそらく、単なるハンターなのだから。

次の晩、できるだけ平静にあたしはスカイプを立ち上げた。「すみません」ぴーんとすぐにメッセージは返ってきた。「来ますか?」「いいえ、行けません」

「・・・」

「あたし多分、白須さんにはずっとそばにいて欲しくなると思います」

「・・・」

「だけどそれ、無理でしょう?」

「もう無理は言いません、僕は」

「もっと、距離が近かったらよかったです。・・・それかあたしがもっといい女だったら」

「いや」白須さんは言った。「木村さんは魅力的ですよ」

それからスカイプはぷつんと切れた。たぶん、また年末年始を埋める、他のハンティングに出かけたのだろう。

あたしは思った。(いろんな人がいる)

この世界中に、お正月を一人で迎えたくないさみしい男たちがたくさんいるのだ。

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