にがくてあまい午後

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籠の鳥ーJAILBIRD-

第二十五章


しかし。

亜美は、それきり何故かぷつんとミーティングへの参加をとぎらせていた。

その代わり、毎日デイケアへ行った。他の皆のメンバーは、相変わらず亜美に冷たいと言うより、無関心だったが、亜美は平気だった。

木崎が、好きだった。

自分に関心を寄せてくれる人に、出会うのはこれが初めてだった。

もう、一つ。

大ヶ丘先生との出会いがあった。

大ヶ丘先生は、亜美の住む街の、郊外の草ぼうぼうの一角に、カウンセリングルームを開いていた。・・・そこに、初めて行った時のことを、亜美は決して忘れないと思った。

最初、その白い、小さなカウンセリングルームに行った時、亜美は正直脅えていた。備え付けのスリッパを、間違えてはかずに、ストッキングのまま部屋に上がってしまったのが、その最大のあらわれだった。・・・しかし、大ヶ丘先生は笑わなかった。

「嵯峨さん、スリッパがここにありますよ」

先生は、そう言ってゆったりした仕草で、亜美に番茶をとぽとぽと注いだ。・・・この、小父さんが亜美は即座に気に入った。

亜美は、自分のために注がれた番茶を啜りながら、ぽつぽつと大ヶ丘先生の質問に答えた。

「なるほど・・・。君のお母さんは、勝手に君のPCの足跡を追跡してしまうの?」

「はい。昔からそうでした。私への手紙も、弟のゆうへの手紙も、勝手に開封してしまう人でした」

「そう。お母さんは、『ボーダーライン』が引けない人なんだね」

「ええ・・・」

「しかし、どうしてそれが分かったの?」

「私の行きつけのネットカフェで、一度、ネームカードを忘れて、苗字と住所を名乗ったら、母のカードが出て来たんです」

「うん」

「それで・・・。何故、いちいち私のPC上の行動に詳しいのか、謎が解けました」

「しかし、お母さんは自分のために勝手にネットカフェに行っていたと言うことはない?」

亜美は、かぶりを振った。「あそこは、贅沢好きの母が、行くようなところで本来ありません」

「うむ・・・」

「それで、父にそれとなく母の行動を告げ口したら」

「ううむ」

「今度は、近所の図書館のPCから、私を追跡しているみたいなんです」

「分からないねぇ」

「私にも、分かりません」

「君の、『勝ち組』の周りの人は、『それは、お母さんが貴女を心配しているからだ』と言うでしょう?」

「どうしてそれがわかるんですか?」

「それは、本当は違うからだよ。・・・自分の子どもを、信頼するとは、そういう行動を取ることではない。」

「・・・木崎さんも、そうおっしゃいました」

「木崎ねぇ」

「御存じなんですか?」

「ああ」

亜美は、あんぐりと口を開けた。「まさか・・・木崎さんも、やっぱり昔ここに通っていて、それで」

「それは、どうかな。私はここで会った人の事は誰にも話さない」

亜美は、帰り道、自転車をこぎながら思った。(木崎さんは・・・やっぱり、”回復者”だったのだ。だから、他のケースワーカーとどことなく違うのだ・・・でも、このことは誰にも言ってはいけない)

その、小さなカウンセリングルームに、週1回通うのが、亜美のもうひとつの目的になった。

「ここではね・・・」

「え?」

「セルフヘルプグループに、参加することを前提に、話し合いをしている」

「はい」

「回復は、一人の力では難しい」

「わたし・・・DEPTに参加しようかと・・・」

「それは、いい。”DEPT”の意味を知っている?」

「いいえ」

「”独立”だよ。」

亜美が、その言葉を聞いたのは、X’masの前日だった。
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