にがくてあまい午後

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にがくてあまい午後

お正月

年も明けた三日。

あたしは志岐さんと初詣に出かけていた。・・・志岐さんはいつものように言葉少なだった。

「神社っていいですね」

「ええ、気持ちがきれいになる気がします」

あたしは、賽銭箱の前でぽんぽんと手を合わせると、破魔矢を買った。・・・それからふたりで天ぷらそばを食べた。

「もしかして、大晦日に食べましたか?」

「ええ」

「すみません」

「でも、家で自分で作ったのよりおいしいです」

それきり黙って、正月の寒い街路を歩いた。「さようなら」「じゃあ」志岐さんは細い背中を伸ばして歩いて行った。

あたしは多分。

志岐さんと結婚すれば幸せになれるのだろう。

だけど、結局その夜もあたしはスカイプに向かっていた。「こんばんは」「やあ」白須さんの落ち着いた低い声がした。

「あたし・・・」

「ん?」

「死んじゃうのかも知れません」

「何か、病気なの」

「いいえ。ただ・・・」

「ただ?」

「死んじゃってもかまわないと時々思うんです。・・・どうせ、亡くなるときはみんな苦しいんだし」

「何があったのかな」

「・・・」

「君が何か抱えていることはよくわかるよ」

言いづらかったので、あたしは話題をずらした。「逃げてたと思うんです」「?」「こういう気持ちから」今度は白須さんが黙った。暫くして白須さんは言った。

「僕も」

「・・・」

「離婚してからそんな気持ちになることがあるよ。なんで生きてるのかなぁって」

「苦しいですよね」

「うん、生きることは苦しい」

「あたし」

「?」

「航空券、取ってもいいです」

「本当?」

「ええ。・・・取り方教えてください」

「このサイト」

リンク先には、格安航空券が沢山並んでいた。「落っこちないですか?」

「落ちるかもしれない。でも」「でも?」「死ぬときはみんな一緒」

あたしと白須さんは声を合わせて笑った。「お正月らしくないですね」「そうでもないよ」「?」

「昔の言葉でね、『正月は冥土の旅の一里塚』って言うんだ」

「・・・」

「だろ?」

「あたし」あたしはためらって言った。「一応、まだ絵本も出したいし」

「絶望してる訳じゃないんだね」

「はい」あたしは嘘をついた。「じゃ、僕とつきあうのはやめなさい」白須さんはスカイプを切った。あたしはいつまでも、白須さんのいない暗い画面を見つめていた。

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