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にがくてあまい午後

ひも

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「それで?」きっこはヴェローチェでコーヒーから目を上げてたずねた。「あんた、航空券手配しちゃったの?」

「うん」

「うーん」きっこは言った。「いいんだけどさ、あんたに経済力があれば」

「?」

「鈍い子だね」きっこは言った。「それって、要するにこれから何度でも、あんたの自腹切って会います、って言ったのと同じだよ」

「でも、白須さんは三月に大きな仕事がはいるって・・・」

「じゃ何故それまで待てないのよ」きっこは苛々した声で言った。「要するに、ひもじゃんそれ」

「・・・」

「あんたが破産するまで続ける気ならいいけどね。じゃね」

きっこは、席を立つとエコバッグを抱えて出て行った。

(ひも・・・)

(確かに、あたしが必要としてるのはそれかも知れない)

(けども)

(それはあたしが、働ける場合の話だ)

(今、あたしのパトロンであるのは、自己中な父なんだ・・・)

あたしは白須さんといると落ち着く。

だけどこればっかりは仕方がない。

その夕、早速あたしはこれで最後のスカイプを立ち上げた。「白須さん」「やあ」「チケット、キャンセルしました。父が倒れたので」

「そう・・・」白須さんは少し驚いたように言った。「自分でできたの?」「はい」

「確かにこれは僕のせいでも敦美ちゃんのせいでもない」

「・・・」

「お父さんと一緒にいてあげて」

「はい」

「それから・・・」

聞かずに、あたしはスカイプをアンインストールするとため息をついた。(また、頭痛が復活した)

だけどいいことがわかった。

いいことか悪いことかわかんないけど、あたしが求めているのは妻の座ではなく、世話をしてくれる人だ。あたしを慰めてくれる人だ。

けども。

それが手に入らないならしょうがない。

あたしは、じんじんする頭を抱えて、パパのための振り塩の焼き鳥をあっためて、ポテトサラダを作った。

(あたしとパパが折り合いが悪いのは、多分性格が似てるからだ)

(パパがママを大事にするのは)

(ママが怠けもんでも、パパを優しく慰めたりするからだ)

依存とか。

共依存とか。

いいわるいの問題じゃない。

それは人間が根本的に求めているものだ。・・・程度が問題なだけだ。

その晩の焼き鳥には、七味がかかってなくてしょっぱかった。

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