にがくてあまい午後

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にがくてあまい午後

安全

結局、あたしは白須さんと交信するのをやめた。

正直、白須さんが怖くなったのもある。

白須さんの大言壮語を聞いているのは気持ちがよかった。・・・疎外されているもの同士で生きてるって実感もあった。

だけど、白須さんは結局あたしに責任を押し付けている。自分が乗る航空券を、あたしに払わせているのがいい例だ。

そういうことも、世の中にはあるんだろうと最初は思った。

だけど、あたしが払った一万六千円は自分のお金じゃあない。その不安感を白須さんは肩代わりしてくれない気がする。

生きていくと言うことは。

不安に耐えるって言うことだ。

あたしは正直、白須さんが欲しかった。

でも、それ以上に普通に生協で野菜を買ったり、新しい靴を買ったり、このマンションでPCを操る生活を手放したくなかった。

そういう意味で白須さんは危険なのだ。というより、もっといえばあたしを我慢できなかったお兄ちゃんと同じ人種なのだ。

あたしはおそらく。

お兄ちゃんが与えてくれなかったものを白須さんに求めていたのだろう。

次の日、外は真っ白だった。

(雪だぁ)

(こんこんつもってる)

あたしは部屋の中から雪を見るのが大好きだ。・・・だけど、今日はそうは言ってられない日だ。小説のサークルで、用賀にある美術館まで行くのだ。

道はもう、凍ってると言うよりぐじゃぐじゃして歩きにくかった。(おニューのブーツじゃなくて長靴で来ればよかったなぁ)

だけど、何度も電車を乗り降りしてついた美術館のレストランは気後れするほど立派だった。宝珠さんと田万川さんは食前に白ワインを注文した。

「皆さん、サーモンのトマトソースでいいかしら?」

(ほんとは、牛肉の赤ワイン煮食べたいけど高いしなぁ)「それにします」

サーモンは口の中でほろっと崩れる味だった。お食後は例のまっ白いクリームが沢山はいった堂島ロールだった。

お腹がくちくなった後、早速美術館を一回りした。知らない画家の展覧会だったけれども、思ったより見ごたえがあった。・・・あたしはいくつか即興で散文を手帳にメモした。

二時半に、地下の喫茶で合評会が始まった。

「みんなよく書けてます。・・・ただ、これだと参考にした絵がないと独立した小説としてわかりづらいね」と先生は言った。

「わかりました」

皆で、もう暗くなった世田谷の郊外の道を、雪に足を取られながら歩いた。あたしは久しぶりに幸せな気分だった。

(どっかに)

(こういう居場所があれば)

(確かに、あたしは危険な恋愛をしなくっても済む)

あたしは、自分が思っているほどロマンティックではないのかも知れない。

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