にがくてあまい午後

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にがくてあまい午後

恋愛

それからあたしは。

白須さんといろんな話を夢中でした。百億年くらいの孤独感が溶けてゆく感じがした。

「僕はね」白須さんは言った。「十年・・・いや、二十年前この業界をひっくり返そうとして失敗した。その時、離婚もしたし国へも帰った」

「そうだったんですか」

「今は、ただここで世の中がどう流れてゆくかを見るだけだと思ってる」

「それがいやだから、東京への航空券取ってって無茶言ったんじゃないんですか?」

「はは、ただ敦美ちゃんに会いたかっただけ」

「あたし・・・あたしは」

「うん?」

「白須さんに会うまで、恥ずかしいとかそういう感覚なかったです」

「今はあるんでしょう?」

「はい」

「じゃ、いいじゃない」

「正直、他人のことなんかどうでもよかったし、自分のこともどうでもよかったんです」

「そうなんだ」

「今は」あたしは言った。「白須さんがあたしに気を使ってくれるのがわかるから」

「そんなんでもないでしょ」白須さんは言った。「普通でしょ」

「いえ」

「そうかなぁ」

「・・・ずっと、ファザコンだったんだと思います。あたしのことどうでもいい、父親のことばかり考えてました」

「どうでもいいってことはないんじゃない」

「父は、あたしがお兄ちゃんに乱暴されても守ってくれませんでした」

「・・・」

「未だに母は兄の味方してます」

「それは酷いな」白須さんはぼそっと言った。「みんな、そんなの当たり前だって言うし」

「当たり前じゃないよ」

「・・・」

「泣かないで」

「・・・」

「大丈夫だから」白須さんは繰り返した。

実際。

白須さんはあたしを騙しているのかも知れない。でもそれはどうでもよかった。

「あたし、自尊心がなかったと思います」

「今はあるんでしょう?」

「少し」

「よかった」

「白須さんのおかげで」「ありがとう」「なんでありがとうって言うんですか?」

「僕は自信がなくてね」白須さんはぼそっと言った。「白須さんはかっこいいです」

「本当かな」

「ええ」

「ありがとう」

白須さんは、それから何度も慣れない風にありがとう、と言った。あたしは逆に、ありがとうとごめんなさいの安売りをしなくなっていた。男の人に甘えるってこんなにほっとするものかと思った。

「今日、ビーフシチュー作りました」

「できたら送ってほしい」白須さんは冗談とも本気ともつかぬ感じで言った。「腹減ってる」

「ふふ」

「へへ、って言わなくなったね・・・。女の子はそのほうがいい」

あたしは、今まで無理をし過ぎてきたことに気づき始めていた。

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