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籠の鳥ーJAILBIRD-

第二十七章

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まんじりともせずに、亜美の最悪のX'masイブは、過ぎた。・・・早朝、亜美は頭痛を抱えながら、例によってPCを開いていると、探していた情報が飛び込んできた。

「DEPT,12月25日。X'masランチ会。13;00~15;00.レストランバッハ」

(これだ・・・。出て、見よう)

亜美は、髪を洗ってとかすと、慣れない手つきで眉を整えた。右眉が、少しびっこになった。・・・着てゆく服は、一番地味な外出着を選んだ。

レストランバッハは、亜美の街から1駅離れた市にあるらしい。

グレイのコートを着て、駅まで寒い道を速足で歩いた。もう、慣れてきた電車に乗ると、周りが少し見えてきた亜美には、カップルの姿が眩しかった。

(私にも・・・ああいう風な日が来るのかしら)

駅を降りると、樹々のイルミネーションが、消灯したままさみしそうにぶら下がっていた。レストランバッハは、その名に似合わず、イタリアンの店だった。

中は、人いきれでざわざわしている。

ひときわ目立つ女性が、中心で大声で話していた。片手には、マルボロをくゆらせている。

「それでね・・・。3ヶ月たったら、旦那に連絡してみようかと思ったのよ。あの、アルコホーリクのDV野郎にね。でも、あたしの共依存も3ヶ月ですっかり抜けてたのよ」

周囲の、華やかな(・・・亜美と、同年代と思える)人達が、どっと笑った。

「それはさ、朱実さん。君が11年間、ミーティングに出続けた賜物だよ。僕はそう思う」気のよさそうな、年長の男性が話しかけている。

「・・・どうしても、回復したかったから」

「モロボシさん、朱実さんフリーになったのよ。どうする?オールドタイマー同士でしょ?」

「やめてよぉ。もう、男はこりごり」

「言われてるわねぇ」

亜美は、割り込んだ。

「あのぉ・・・」

「ん?」

「わたし・・・初めて来ました。分かち合い、まだです。いいですか・・・?」

「ああ、ニューカマーさんね。よろしく。あなたのアノニマスネームは?」

「アミ」

「わたし、朱実。よろしくね」

「アミさん、初めまして。モロボシと言います」

「きゃぁ、この子駄目よぉ。いきなり話しかけちゃあ。・・・脅えてるじゃないの」朱実さんは、ずけずけと言った。「もしかして、引きこもり?よく、いるわよDEPTにも。遠慮しなくていいのよ」

「はぁ・・・いえ、ええ」

「誰と、共依存してるの?両親?」

「前は・・・母です。でも、出ていきました。私の、共依存の相手は、主に援助職の人です」

「仲間ね」

「仲間だ」モロボシさんと呼ばれている男性も、つぶやくように言った。

「もしかして、あなた、あのぶっ殺したいカウンセラーのとこ、通ってるの?」

「え・・・」

「いいのよ、いいのよ。ここでは”ボクサー”と言いなさいね。・・・それが、彼のアノニマスネームだから。」朱実さんは、続けた。「私、彼とこの会を立ち上げて11年になるのよ」

「私・・・カウンセラーを、やりこめてしまうのが癖で・・・前の人は、病気になっちゃったんです」

「あちゃー、そりゃ燃え尽きだ。あんたの責任と違うよ」朱実さんは、2本目のマルボロをくわえながら言った。

「そうだよ。援助職なんて、共依存の塊だからな」

亜美は、こんなにいきなり、話の中心に飛び込めた事に驚いていた。(ここは、SAYANとは全然違う・・・ALAとも、別世界だ)

モロボシさんは、亜美の気持ちを見透かしたように言った。「ここは、サナトリウムDEPTって別名なんだよ。スパゲッティ、頼むかい?」

「ええ。・・・ぺペロンチーノお願いします」

「よし」

モロボシさんは、メニューをわざわざ取りに出て行った。

「あの人、『業界人』だからね。この、ビョーキの業界」朱実さんはウインクした。・・・亜美にも、次第に他の人の顔も区別がついてきた。

「あんたのお母さん、病気だね。・・・母親が、ミーティングに出ればいいのにね」

「え・・・ええ」

「メニューここだよ」いつの間にか、戻って来たモロボシさんが言った。「そんなに高くないでしょ?」ペペロンチーノは、セットで950円だった。

「それ、お願いします・・・コーヒーで」

「僕は紅茶」

世間がここのところ、少し見えてきた亜美は、思った。(紅茶を、頼む男性は珍しい・・・しかも、こういうところで・・・)

(DEPTは、意外と、ブルジョアの集まりなんだ・・・皆の服装や鞄を見ても、それと分かる)

亜美にとっての、それはーDEPTはー初めての世間からのX'masプレゼントだった。
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