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にがくてあまい午後

バレンタイン

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朝。

あたしは、めずらしく早く目が覚めて、ベッドサイドテーブルの書類の山をうっかりどさっと倒した。と、一枚の葉書がずれた感じで出てきた。

(?)

「あけましておめでとうございます。敦美さんのことを時々思い出します」(!)

これは。

年頭に届いて、あたしがなんとなく無視してた芹田の年賀状だ。

何だか、らしくもなく、動揺している自分がいた。(白須さん)

年末年始は、白須さんのことで頭がいっぱいで他のことに気をむける余裕はなかった。でも・・・

白須さんはやさしい。

受け止めてくれる。

だけど、「僕に今あるのは手持ちの金だけだ」ってはっきり言っている。貯金もゼロらしい。

そしたら。

あたしはまた、自分で航空券を取らないと白須さんに会えないんだろうか?

無我夢中で、Gパンをはいてセーターを頭から被った。そのまま、年賀状をひっつかむと寒い雪の朝の街路に出た。

(うわ)

(凍ってる)

今日は十三日だ。何とか間に合うはずだ。

あたしは、近くのコンビニに飛び込んだ。「あの」「はい?」「この、ゴディバのチョコレート郵送できますか」

「大丈夫ですよ」

「つつむものあります?」

「ええ」

あたしは、千円出してゴディバのトリュフを買うと、財布をごそごそして空いていた名刺カードを取り出した。(これ、メッセージカードにちょうどいい)

震える手で、サインペンを走らせた。

「芹田君へ。HappyValentine!来てね。待ってます」

それから、カードを金色の紙袋に落とし込むと、女性の店員さんが厚めのビニール袋でさらに上から包んで、宅急便にしてくれた。

「明日、指定時間ありますか?」

「働いてるから、夕方の方がいいかも・・・ううん、指定なしでいいです」

女性の店員さんは、にっこり笑うと「指定なし」に印をつけた。

「ありがとうございます」

「ありがとうございます」

コンビニの外に出ると、寒さで耳がきーんとした。咳がほんのすこしこんこんした。

(どう出るだろう)

(芹田)

あたしはずるいんだろうか。

でも、何だか長い長いトンネルを抜けた後のようにほっとしていた。

(芹田がいなくなって一年間を、あたしはサバイバルしたのだ)

(だけど)

(さみしい)

バーチャルで繋がっているだけの関係は、やっぱり空しい。

(あたしは)

(長いこと)

(自分が本当に希望してることが言えなかった)

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