にがくてあまい午後

スポンサー広告

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
もくじ  3kaku_s_L.png Morning Glory
もくじ  3kaku_s_L.png Black short short
もくじ  3kaku_s_L.png DOWN BEAT
もくじ  3kaku_s_L.png 刻印-sin-
もくじ  3kaku_s_L.png あとがき
もくじ  3kaku_s_L.png 現実の林檎
  ↑記事冒頭へ  
←第二十九章    →第二十七章
*Edit TB(-) | CO(-) 

籠の鳥ーJAILBIRD-

第二十八章


次の朝、亜美が珍しく上機嫌で目を覚ますと、父親の声が階下から響いた。

「亜美、ちょっと来なさい」

亜美が、もたもたと、例の贅沢な外出着に着替えて、1階に下りると、ホリウチさんの姿がなかった。

「ホリウチさんは、辞めるそうだ」父親は、憂鬱そうに言った。

「新年までには、何とか次の人の都合をつける。・・・お前は、タリーズで朝食を取って、デイケアとやらに出掛けなさい。」

「はい」

それでも、亜美の浮き立った気分は消えなかった。・・・タリーズの、メープルシロップとホイップクリームのかかったフレンチトーストは、これまでのどの家政婦さんのトーストより、美味しいと亜美は思った。

しかし。

デイケアにつくと、深津サンの姿もなかった。・・・亜美が、半分びっくり、半分きょとんとしていると、珍しくどくとるマンボウが、3Fの階段を上って来た。

「深津サンは、休職されます」どくとるは宣言した。

「え・・・?ご病気ですか?」

「娘さんが、卵巣がんだそうだ。デイケアの職員は、木崎君一人になる」

「・・・」

「デイケアの、閉鎖も考えたが・・・。ここは、採算抜きで、患者を診ているところです」

木崎は、なにか言いたそうにしたが黙った。

「では、私は診察に出ます」

(また、一人、味方がいなくなった・・・)亜美が、しょんぼりしていると、木崎が顔を近づけてきた。

「亜美さん」

「はい・・・?」

「DEPTに、昨日参加したようだね。お父さんが、お礼を言っていたよ」

「父が・・・ですか?」木崎は、苦笑いした。「無論、ミーティングに出ていること自体ではないよ。しかし、夜歩かれると心配だそうだ」

「はい」

「それで・・・ALAは、止めたの?」

「わたし、自分で自分の参加するグループ、決めたらいけないんですか?」

木崎の唇が、これを聞いて少しゆがんだ。「むろん、君の自由です。が・・・」

「が?」

「僕はもう、ミーティングの紹介はしません。自分で、PCで調べること。・・・それから、これからは嵯峨さんと呼びます。」

そう、言い捨てると、木崎は廊下に出て行った。亜美は、追った。

「木崎さん」

「これからは、君の面倒だけは見られません。僕の役目は、デイケア全員の回復をサポートすることです」

「・・・」

「もう、廊下で話すのもやめましょう。デイケアの部屋に、戻りなさい、嵯峨さん」

亜美は、なおしゅんとして、珍しく嫌いなウノを懸命にした。木崎は、出来るだけ亜美の方をみないようにしていた。

3時きっちりに、デイケアは終わった。

くたくたになった亜美が、家につくと、父親が、自分の食べた皿を自分で洗っていた。亜美の方を振りかえった父親は、少し勢いの衰えた声で、言った。「30日には、新しい人が来る。今日は、なだ万の弁当を取った」

父親と二人きりで無言で食べる、その夜のなだ万の、お弁当は、不味かった。・・・デイケアの、300円の仕出し弁当より、ずっとずっと不味かった。
関連記事
もくじ  3kaku_s_L.png Morning Glory
もくじ  3kaku_s_L.png Black short short
もくじ  3kaku_s_L.png DOWN BEAT
もくじ  3kaku_s_L.png 刻印-sin-
もくじ  3kaku_s_L.png あとがき
もくじ  3kaku_s_L.png 現実の林檎
  ↑記事冒頭へ  
←第二十九章    →第二十七章
*Edit TB(0) | CO(0)

~ Comment ~















管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


  ↑記事冒頭へ  
←第二十九章    →第二十七章

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。