にがくてあまい午後

スポンサー広告

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
もくじ  3kaku_s_L.png Morning Glory
もくじ  3kaku_s_L.png Black short short
もくじ  3kaku_s_L.png DOWN BEAT
もくじ  3kaku_s_L.png 刻印-sin-
もくじ  3kaku_s_L.png あとがき
もくじ  3kaku_s_L.png 現実の林檎
  ↑記事冒頭へ  
←第三十一章    →第二十九章
*Edit TB(-) | CO(-) 

籠の鳥ーJAILBIRD-

第三十章


あっと言う間に、楽しい三が日は過ぎた。

桂さんは、4日に、デパートで福袋を買ってきた。「亜美さん、開けてみなさい」

「いいの・・・?」おずおずと、亜美はたずねた。

「あはは、いいのよ。3千円が2千円になってたから」

亜美が、袋を開けると、白いボンボンのついたニットのトップスと、スキニージーンズと、アクセサリーが数個出て来た。亜美は、息をつめた。

「気に入ったら、着てね」

「でも、本当にいいの・・・?」

「お父さん、食費をやたらとくれるからね。倹約、してるのよ」桂さんは微笑った。

「ありがとう・・・」

亜美は、その白いニットと、ジーンズと、王冠型のイヤリングで、初めて、新年のDEPTの「分かち合い」に、出掛けた。


そして3ヶ月が過ぎた。

春は、もうそこまで来ていた。

亜美は、髪が伸びた。桂さんの見よう見まねで、自分で洗濯機を回す事を覚えた。それから、コーヒーメーカーの使い方も。

しかし、デイケアは木崎の思い通りに進んでいなかった。深津サンが辞めてから、メンバーは一人、二人と減り、今では、毎日顔を出すのは、亜美と、50代の気難しい小母さんだけだった。

「木崎君はねぇ」どくとるマンボウは、言った。

「はい」

「『回復』に、熱心過ぎるんだよ・・・。これでは、年度末にはデイケアは、残念ながら閉鎖だ」

(閉鎖?閉鎖・・・?)

その日、亜美は思い切って、午後5時にデイケアを訪ねた。木崎は、まだ書き物をしていた。

「嵯峨さん」

「デイケア・・・終わるんですか?」

木崎は、苦笑いした。「そのようだね」

「わたし・・・困ります」

「ここに」木崎は、デスクの引き出しを開けた。「他の、デイケアのマップがあります。あと、作業所のリストが・・・」

「作業所・・・?」

「君の、居場所が、そこで見つかるかどうか、僕には見当がつかないが」

亜美が、沈黙していると、木崎は言った。

「最後に・・・」

「?」

「君の、お父さんに言いなさい。『君が、困っているなら、僕には助ける用意があると、木崎さんが言っていた、と。』」

「今・・・?」

木崎は、無言で待っている。亜美は、1ヶ月前、ようやく買い換えてもらった携帯電話を震える手で、押した。

「もしもし、お父さん・・・」

「何だ、亜美」

「木崎さんが・・・私が、困っているなら、助ける用意があると」

「分かった」

電話は、すぐに切れた。亜美は、仰ぐように木崎の顔を見た。しかし、木崎は腕組みをしている。

「あの・・・」

「君は、いつものように処置室にいなさい。僕は、デイケアの部屋でお父さんと面談します」

亜美は、30分処置室で待った。・・・階段に、足音と二人の声が聞こえた。二人は、デイケアの部屋に入って行ったようだった。
関連記事
もくじ  3kaku_s_L.png Morning Glory
もくじ  3kaku_s_L.png Black short short
もくじ  3kaku_s_L.png DOWN BEAT
もくじ  3kaku_s_L.png 刻印-sin-
もくじ  3kaku_s_L.png あとがき
もくじ  3kaku_s_L.png 現実の林檎
  ↑記事冒頭へ  
←第三十一章    →第二十九章
*Edit TB(0) | CO(0)

~ Comment ~















管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


  ↑記事冒頭へ  
←第三十一章    →第二十九章

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。