にがくてあまい午後

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籠の鳥ーJAILBIRD-

第三十二章


「作業所、ねぇ」

朱実さんは、その土曜のDEPTのフェローで、相変わらずマルボロをふかしながら言った。

「いい、思いつきだと思うけど・・・アレは、結構きついよ。あんた、つとまるの?」

「え・・・」亜美は、躊躇した。

「私もさぁ」別の人が言った。

「鬱で、再入院した後、行ってたことあるわよ。でも、会社と同じよ。毎日仕事があって、出来る人と出来ない人がいる」

その晩、亜美は友人に電話をかけた。

「こんばんわ・・・」

「やぁ、亜美ちゃん。さゆりだよ」懐かしい声が、返って来た。「何年ぶり?元気にしてる」

「ええ」

「よかったぁ。・・・私、今、作業所通ってるの」

「そのことで、ちょっと・・・」

「もしかして」勘のいい、さゆりちゃんは言った。「来たいの?」

「うん・・・。でも、作業、きついの?」

「そんなことないよ」さゆりちゃんは、はっきり言った。「そういうとこもあるけどね・・・。ヴィーボはそういうとこじゃないよ。他の作業所は、内職が多いけど、ヴィーボは『居場所』を作るところなんだよ。もちろん、働かなくちゃいけないけれど」

「ふぅん」

「あ、ヴィーボってね、作業所の名前」

「うん。・・・どんなこと、するの?」

「調理実習や、針仕事や、あとお菓子作り。・・・男性は、清掃作業とうどん作り」

(お菓子・・・)

さゆりちゃんは、亜美が考えたとほぼ同時に言った。「亜美ちゃん、高校時代、お菓子作るの好きじゃなかった?」

「うん」

「出来なければ、休憩していてもいいんだよ。・・・ヴィーボはそういうところ」

亜美は、その後少し近況を話した。さゆりちゃんは、言った。

「ミーティング、かぁ・・・。私も一度、カウンセラーに薦められたけど」

「どうだった?」

「あんまり、合わなかった」さゆりちゃんは少し小さな声になった。「ヴィーボは、いいとこだよ」

「ありがとう」

亜美は、電話を切った。・・・弟のゆうが、いつか言っていた言葉を思い出した。ゆうは、アイヌの手工芸品に興味があって、自分でも作ってみたいので、北海道に行ったのだ。

「お姉ちゃん。何でも、手先を動かすのが一番だよ。」

(さゆりちゃんに、紹介してもらえるかなぁ・・・ヴィーボを)

亜美は、ふと思い立って玄関で靴を履いた。

「亜美さん、どこいくの?」すっかり家族の一員になった、桂さんが聞いた。

「ちょっと、スーパー」

「珍しいこと。・・・そしたら、ピーマンと葱、買ってきてくれる?あと、500円くらいだったら、Tシャツ買ってもいいわよ」

「ありがとう」

しかし、亜美は衣料品売り場ではなく地下で、欲しいものを探した。(あった・・・)

「お客さん、ピーマン1袋124円、葱1束98円、チョコレートブラウニー1箱498円」

「はい」

亜美は、ビニール袋を抱えて帰路を急いだ。

(箱入りの、キットなら簡単な筈だ・・・。今夜、焼いてみよう、ブラウニー)

その夜、久しぶりにオーブンで焼いた、くるみ入りのブラウニーは、少し焦げたけれど美味しかった。

「亜美さん、私はお菓子は苦手なのよ。・・・だんだん、未来が開けてきたじゃないの」

「うん・・・」

「おいしいな」父親も、ぼそっと言った。

「作業所、行くの?」

「行きたい」亜美は、珍しくはっきり希望を言った。「さゆりちゃんの、行ってる作業所・・・」

父親は言った。「行くか・・・。センセイに、相談してみなさい」
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